From recent papers

Impact of Layer Stacking Manner on Lithium-Ion-Battery Performance in Electrically Neutral Tetraoxolene-Bridged Iron(II) Hexagonal Layer Metal-Organic Frameworks

Wataru Kosaka, Naoki Eguchi, Taku Kitayama, Ryoma Sato, Ryosuke Nakao, Yoshihiro Sekine, Shinya Hayami, Kouji Taniguchi, and Hitoshi Miyasaka
Chem. Mater., 2024 in press. DOI: 10.1021/acs.chemmater.3c02671


ハニカム層状格子の積層様式がリチウムイオン電池特性に及ぼす影響

鉄イオンがテトラオキサレン(X2An)2,2’-ビピリミジルで架橋された中性ハニカム層状格子を新たに合成した.得られた化合物はいずれも同じ電子状態を持ち,ハニカムの中心に大きな空隙を有する一方で,二次元層の積層様式のみがテトラオキソレン上の置換基に応じて異なっていた.その結果X = F が一次元細孔チャンネルを持つのに対して,X = Cl, Brの場合は分断された孤立細孔となっていた.これらの化合物をリチウムイオン電池(LIB)の正極に用いて充放電特性について検討したところ,低電流密度下では電池容量に大きな差異はなかったが,高電流密度下での充放電や過電圧は積層方法により大きな違いが見られた.この結果は,リチウムイオンの拡散経路がLIB特性に大きく影響を与えることを証明している.


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Post-synthetic molecular modifications based on Schiff base condensations for designing functional paddlewheel diruthenium(II, II) complexes

Chisa Itoh, Haruka Yoshino, Taku Kitayama, Wataru Kosaka, and Hitoshi Miyasaka
Dalton Trans., 2024, 53, 444-448. DOI: 10.1039/d3dt03535b


簡便な脱水縮合反応を利用した置換基変換による酸化還元特性の制御

水車型ルテニウム二核(II,II)錯体([Ru2II,II])の置換基変換のための新しい合成ルートを開発した。当研究室ではこれまで、安息香酸配位子に様々な置換基を導入することで、[Ru2II,II]の酸化還元特性を制御してきた。置換基の導入には単に対応する安息香酸配位子を用いて[Ru2II,II]を合成する手法を採ってきたが、これには[Ru2II,III]+状態から[Ru2II,II]状態への還元など複数の合成過程を要する。本研究では、4-ホルミル安息香酸を有する[Ru2II,II]錯体をテンプレートとして、様々なモノアミン(NH2-R)と温和な条件で反応させることで脱水縮合反応を行い、アリール4位にイミン基で結合された多様な置換基を有する[Ru2II,II]錯体を構築することに成功した。このアプローチでは、[Ru2II,II]を合成後に末端置換基を変換するため、様々な誘導体を1ステップで得ることができる。また、イミン基で結合されたペンダント基は、従来の置換安息香酸配位子と同様に[Ru2II,II]の電子状態に大きく影響を与えることが明らかになった。


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CO2-Sensitive Porous Magnet: Antiferromagnet Creation from a Paramagnetic Charge-Transfer Layered Metal-Organic Framework

Jun Zhang, Wataru Kosaka, Qingxin Liu, Naoka Amamizu, Yasutaka Kitagawa, and Hitoshi Miyasaka
J. Am. Chem. Soc., 2023, 145, 26179-26189. DOI: 10.1021/jacs.3c08583


二酸化炭素が磁石を創る

酸素や二酸化炭素といった身の回りにあるガスに応答する多孔性磁石の開発は挑戦的な課題であり,次世代の磁気デバイス・センサーへの応用への期待がもたれる.現在までに我々は,ガス応答性磁気相転移に関して,「磁気相の変換」(フェリ磁性相から反強磁性相,およびその逆)と「磁気相の消去」(フェリ磁性相から常磁性相)について達成してきた.今回我々は,以前に報告した柔軟な電子状態を持つ常磁性層状化合物(J. Am. Chem. Soc. 2021, 143, 7021)を用い,二酸化炭素吸着による常磁性相から反強磁性相への磁気相変換を実現した.本化合物は二酸化炭素吸着に伴い格子内での電子状態変化が誘起され,TN温度62 Kの反強磁性体となり,さらに電気伝導度の増加が観測された.また,TN温度以下でも、磁場印可によりフェリ磁性体に転移させると、そのままフェリ磁性体として維持される.磁気相変換は二酸化炭素の脱着により可逆である(CO2吸脱着による磁気スイッチ).本研究は,ガス吸着による非磁性相から磁気秩序相への変換,すなわち「磁気相の創出」を実現した多孔性磁石の初めての例である.


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Densely Packed CO2 Aids Charge, Spin, and Lattice Ordering Partially Fluctuated in a Porous Metal-Organic Framework Magnet

Wataru Kosaka, Yoshie Hiwatashi, Naoka Amamizu, Yasutaka Kitagawa, Jun Zhang, and Hitoshi Miyasaka
Angew. Chem. Int. Ed., 2023, 62, e202312205. DOI: 10.1002/anie.202312205


CO2吸着に伴う構造ゆらぎ・電荷ゆらぎの解消により磁気相転移温度が向上

金属有機複合骨格(Metal−Organic Framework: MOF)は高い結晶性に伴う規則的な構造を持つ一方で,局所的には有機配位子の柔軟性に起因する構造揺らぎを時として伴う.本研究では水車型ルテニウム二核錯体 [Ru2]とTCNQ誘導体からなる層状分子磁石において,ガス吸着により構造・電荷揺らぎを解消し,磁気相転移温度を大きく向上させることに成功した.用いたMOF磁石のドライ相(J. Am. Chem. Soc., 2010, 132, 11943-11951)は,配位子上置換基の回転ディスオーダーにより構造中に細孔を持たないが, CO2に対してのみガス吸着能を示した.構造を検討したところ,CO2吸着相では上述のディスオーダーが一部解消しており,それによって空いた空間にCO2分子がとりこまれていた.また,磁気測定の結果CO2吸着に伴い磁気相転移温度が65 Kから100 Kへと向上していた.構造解析ではCO2の吸着前後での電子状態変化は認められなかったものの,赤外吸収スペクトル測定では,反磁性のTCNQ(OMe)22−種の存在が示唆され,それがCO2吸着に伴い常磁性のTCNQ(OMe)2•−種へと変化していることが分かった.すなわち,ドライ相に存在するわずかな電荷揺らぎにより部分的に断絶していた磁気相互作用パスが,CO2吸着に伴う揺らぎ解消で繋がったために,磁気相転移温度の上昇が観測されたと考えられる.このように本化合物系では構造・電荷ゆらぎが密接に相関しており,ゲスト吸着によりこれらのゆらぎに働きかけることでマクロ物性の制御が可能な大変興味深い系である.


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Guest-induced pore breathing controls the spin state in a cyanido-bridged framework

Michał Magott, Klaudia Płonka, Barbara Sieklucka, Katarzyna Dziedzic-Kocurek, Wataru Kosaka, Hitoshi Miyasaka, and Dawid Pinkowicz
Chem. Sci., 2023, 14, 9651-9663. DOI: 10.1039/d3sc03255h


“Breathing behavior” in a SCO-framework:CO2, H2O, or empty? decides spin state

Deterministic control over spin states is the necessary requirement in construction of spintronic devices. Iron(II) spin cross-over (SCO) compounds are often utilized for this purpose, as they combine thermally driven transition from the diamagnetic low-spin (LS) state to the paramagnetic high-spin (HS) state with the sizeable change in the molecular volume. On the other hand, colossal changes in crystal volume upon gas adsorption are a well-known property of flexible molecule crystals demonstrating so-called “breathing behavior”. Therefore, combination of the molecular flexibility with the SCO functionality is expected to allow for “remote” spin state switching by introducing guest molecules to the crystalline framework. In this work we describe a three-dimensional coordination framework composed of iron(II), octacyanotangstate(IV), and 4-cyanopyridine, which shows gradual but complete SCO at T1/2 = 88 K, leading to the diamagnetic LS low-temperature phase. When exposed to gaseous CO2 or H2O vapor it undergoes a gate-opening transformation, accompanied by the significant framework volume expansion. While the introduction of carbon dioxide stabilizes HS state down to 2 K, incorporation of water molecules leads to the mixed HS/LS state accompanied by partial hysteretic SCO in T1/2↓ = 187 K and T1/2↑ = 235 K. As such, this study demonstrates “programming” of the LS/LS+HS/HS ground state of the paramagnetic framework by selective guest molecule adsorption.


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Unprecedented highly efficient photoluminescence in a phosphorescent Ag(I) coordination polymer

Haruka Yoshino, Masaki Saigo, Kiyoshi Miyata, Ken Onda, Jenny Pirillo, Yuh Hijikata, Wataru Kosaka, and Hitoshi Miyasaka
Chem. Commun., 2023, 59, 4616-4619. DOI: 10.1039/d3cc00179b


室温で最高値の発光量子収率を示す燐光性Ag(I)配位高分子を開発

高効率な発光を示す材料は高感度センサー、画像表示、蛍光温度計などへの応用が期待され、特にAg系の発光材料は、安価、低毒性、生体適合性、センシング能力などの観点から近年注目を集めている。Ag(I) 錯体を基盤とした多孔性金属錯体 (MOF) や配位高分子 (CP) に関してもデバイスを指向した研究例が報告されているが、これまでの Ag-CP/MOF は、発光材料として極めて重要な要素である室温での発光量子収率が低いという課題があった。そんな中、本研究では三次元構造を有する燐光性Ag-CP (1) 合成し、室温で約60%という非常に高い量子収率を示すことを見出し、これは従来の最高値を示す燐光性Ag-CPと比較して3倍近く高いものであった。種々の物性測定およびDFT計算から、1はMMLCT (metal-metal-to-ligand charge transfer) 由来の発光を示し、重原子効果による系間交差を含めた輻射速度の促進や、配位環境を含めた錯体格子全体の剛直性による無輻射失活の抑制が高効率な発光量子収率に寄与していることが示唆された。


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Charge Manipulation in a Series of π-Stacked Pillared-Layer Frameworks by Tuning Electron Donation Ability of Building Blocks

Wataru Kosaka, Taku Kitayama, Chisa Itoh, Hiroki Fukunaga, and Hitoshi Miyasaka
Cryst. Growth Des., 2023, 23, 1238-1246. Invited for the virtual special issue on “Molecular Magnets and Switchable Magnetic Materials” DOI: 10.1021/acs.cgd.2c01372


π-スタック型ピラードレイヤー擬三次元格子における電子状態制御:格子上の電荷・スピン秩序を変える

当研究室ではこれまで,水車型ルテニウム二核錯体 [Ru2]を電子ドナー(D),TCNQ誘導体を電子アクセプター(A)として,両者を2:1で集積させたD2A型層状格子を構築し,Dのイオン化ポテンシャル(ID)と,Aの電子親和力(EA)を制御することで,格子の電子状態を中性(D02A0),1電子移動イオン性(D+D0A−),2電子移動型イオン性(D+2A2−)のように自在な制御を実現してきた(Bull. Chem. Soc. Jpn. 2021, 94, 2929−2955).さらに最近,層状格子からの発展形として,層間にデカメチルメタロセン ([MCp*2]; Z) を挿入した Z+[D02A−]型p-スタック型ピラードレイヤー擬三次元格子 (p-PLF) へと研究を展開している(Chem. Eur. J., 2020, 26, 16755-16766).本研究では,以前のZ+[D02A−]型格子の構築に用いたものよりも電子ドナー性の高い[Ru2]ユニットを用いてp-PLFを構築したところ,[MCp*2]からTCNQへの電荷移動に加えて,[Ru2]ユニットの一方からも電荷移動が起こり,Z+[D+D0A2−]型の電子状態となることが,結晶構造,分光測定,磁気測定の結果から明らかとなった.このように,p-PLF骨格上においてもD2A型層状格子と同様に,構築素子のIDや EAの調整により電子状態制御が可能である事を実証した.


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Inter-Layer Magnetic Tuning by Gas Adsorption in π-Stacked Pillared-Layer Framework Magnets

Wataru Kosaka, Honoka Nemoto, Kohei Nagano, Shogo Kawaguchi, Kunihisa Sugimoto, and Hitoshi Miyasaka
Chem. Sci., 2023, 14, 791-800. DOI: 10.1039/D2SC06337A

CO2吸着に伴う構造変化を起因とする磁気相変換

これまで当研究室では、水車型ルテニウム二核錯体[Ru2]とTCNQ誘導体からなる層状分子磁石に対して、CO2やO2といった一般的なガス分子や溶媒蒸気、ヨウ素などの小分子を吸脱着させることで、可逆な磁気相変化を実現してきた。磁気相変換には幾つかの機構が考えられるが、最も単純且つ低次元系磁石に広範に汎用な機構「層間構造変化に起因する磁気相変換」に関しては、一般的なガス分子の吸着で実現した例はこれまで報告がなかった。今回、[Ru2]-TNCQ層状分子磁石の層間にデカメチルメタロセニウム([MCp*2], M = Co, Fe, Cr)を挿入したπ-stacked pillared-layer framework (π-PLF)化合物(Chem. Eur. J. 2020, 26, 16755-16766)を用い、CO2吸着による構造変化に因る磁気相変換を実現した。M = Coの化合物は、ゲスト吸着前はTN = 75 Kの反強磁性体であったが、CO2吸着後はTc = 76 Kのフェリ磁性体へと変化した。結晶構造の検討からはCO2吸着により層間距離が大きく伸長しており、層間距離が磁気秩序の決定に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。実際、以前に報告した(J. Am. Chem. Soc. 2021, 143, 7021-7031)層間ユニット間距離10.6 Åを境に層間の磁気相互作用が反転することが確かめられた。


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Considerations on Gated CO2 Adsorption Behavior in One-Dimensional Porous Coordination Polymers Based on Paddlewheel-Type Dimetal Complexes: What Determines Gate-opening Temperatures?

Wataru Kosaka, Jun Zhang, Yudai Watanabe, and Hitoshi Miyasaka
Inorg. Chem., 2022, 61, 12698-12707. DOI: 10.1021/acs.inorgchem.2c01734

細孔の次元性が(→吸着エントロピー)がゲート開閉温度を決定する

一次元鎖錯体[Ru2(p-MeOPhCO2)4(phenazine)]は,100 kPaのCO2下にて385 Kでゲート型吸着挙動を示した.このゲート開閉温度(TG)は,従来報告された同型の鎖状錯体における値(200-270 K)に比べて著しく高い.TGは,吸着熱(DHG)と吸着エントロピー(DSG)を用いてTG = DHG/DSGと表されるが,Clausius-Clapeyron解析よりDHGに大きな違いは見出されなかったことから,高いTGの値は主にDSGに由来していることが示唆された.CO2吸着相の構造を比較したところ,今回の化合物のみが,二次元的な広がりを持つ細孔ネットワークを有しているのに対し,他の化合物では一次元的な,あるいは分断された細孔であった.すなわち,細孔次元性の違いがDSGに反映されTGを決定している事が明らかとなった.ゲート型吸着は,ガス分離などの機能性発現において重要な役割を果たす機構であるが,本結果はいまだに不明な点の多いMOF/PCP材料のゲート型吸着現象を解釈する上で有用な洞察を提供するものである.


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High stabilization of low valency in a homoleptic ortho-hydroxybenzoate-bridged paddlewheel diruthenium(II,II) complex

Wataru Kosaka, Yudai Watanabe, Chisa Itoh, and Hitoshi Miyasaka
Chem. Lett., 2022, 51, 731-734. DOI: 10.1246/cl.220195

分子内水素結合のもたらす電子求引性により[Ru2II,II]状態を安定化

最近我々は,異種架橋カルボン酸からなる水車型ルテニウム二核錯体 (heteroleptic [Ru2])の合成手法を用い,部分的にOH基置換安息香酸で架橋されたheteroleptic [Ru2]錯体の酸化還元特性について検討を行い,オルト位に置換されたOH基がかなり強い電子求引性を示すことを明らかにした(Dalton Trans. 2022, 51, 85.).今回,同種の架橋カルボン酸からなる[Ru2] (homoleptic [Ru2])についてOH基置換安息香酸の導入を試みたところ,m-OHまたはp-OH安息香酸を用いた場合には,[Ru2II,III]錯体が単離され,そこでは安息香酸上のOH基の一つが脱プロトン化する事により,電気的中性が保たれていた.一方,o-OH安息香酸を用いた場合には,[Ru2II,II] 錯体が単離された.電気化学測定やDFT計算による検討の結果,homoleptic錯体の場合においてもo-OH基は,分子内水素結合の効果により強い電子求引性を及ぼすことが明らかとなり,この事がo-OH安息香酸に対してのみ低価数([Ru2II,II])状態を安定化させたものと考えられる.


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Crucial Contribution of Polarity for Bulk Photovoltaic Effect in a Series of Non-Centrosymmetric Two-Dimensional Organic-Inorganic Hybrid Perovskites

Po-Jung Huang, Kouji Taniguchi, and Hitoshi Miyasaka
Chem. Mater., 2022, 34, 4428-4436. DOI: 10.1021/acs.chemmater.2c00094

二次元有機・無機ハイブリッドペロブスカイトのバルク光起電力効果に対する極性の支配的寄与を発見

有機・無機ハイブリッドペロブスカイト(OIHP)系化合物は、高効率の太陽電池材料として、近年世界的に注目を集めている。この物質を用いた既存の太陽電池では、光起電力の誘起に異種物質界面が利用されているが、最近、我々のグループでは、結晶構造の空間反転対称性の破れた系を開発し、界面が無くともバルク物質への光照射のみで起電力を誘起できること(バルク光起電力効果:BPVE)を見出してきた。本研究では、物質設計性の高い二次元OIHPにおいて、有機分子の種類を変えて、“アキラル-極性”、“キラル-非極性”、“キラル-極性”という異なったタイプの空間反転対称性の破れた系を開発し、BPVEに対する極性とキラリティーの寄与を系統的に検証した。BPVEは、現象論的には光の電場に対する二次の非線形応答である為、極性、キラリティのいずれかを持つ系であれば対称性からは許容となるが、実験的には予想に反して、極性を持つ系のみで観測され、キラリティのみを持つ系では観測されなかった。この結果は、最近理論的提案がなされている電子波動関数の幾何学的位相に着目した“シフト電流機構”がOIHPのBPVEの起源である可能性を示唆している。


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A Host–Guest Electron Transfer Mechanism for Magnetic and Electronic Modifications in a Redox-Active Metal–Organic Framework

Jun Zhang, Wataru Kosaka, Yasutaka Kitagawa, and Hitoshi Miyasaka
Angew. Chem. Int. Ed., 2022, 61, e202115976 (1-9). DOI: 10.1002/anie.202115976

Switchable magnets via host–guest electron transfer

Host–guest electron transfer (HGET) in molecular framework systems, such as metal–organic frameworks (MOFs), is a critical trigger for implementing drastic changes in both the host framework and the guest, and can enable possible modulation of the electronic and magnetic properties of frameworks. Post-synthetic incorporation of redox-active guests into redox-active MOFs is a fascinating strategy for achieving guest-driven reversible HGET. Herein, we demonstrated an HGET-induced magnetic phase switch between an antiferromagnet for guest-free form and a paramagnet for I2-loaded form. Furthermore, the I2-loaded form exhibited a hundred-fold enhancement in electrical conductivity compared to that of guest-free form owing to the electron hopping. The regulation of magnetism and electrical conductivity via HGET, which was demonstrated for the first time in this study, can facilitate the design of new porous magnets.


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Role of intramolecular hydrogen bonding in the redox chemistry of hydroxybenzoate-bridged paddlewheel diruthenium(II, II) complexes

Wataru Kosaka, Yudai Watanabe, Kinanti Hantiyana Aliyah, and Hitoshi Miyasaka
Dalton Trans., 2022, 51, 85-94. DOI: 10.1039/D1DT03791A

分子内水素結合の効果によりOH基が電子求引基に!?

水車型ルテニウム二核(II,II)錯体([Ru2])はルテニウムを架橋するカルボン酸,特に安息香酸誘導体に置換基を導入することで,その酸化還元特性を細かく制御可能であるが,置換基としてOH基を導入した化合物は単離が難しく,これまでほとんど報告例がなかった.本研究では,以前に報告した異種架橋カルボン酸からなる[Ru2]錯体の合成法 (heteloreptic [Ru2], Chem. Lett. 2018, 47, 693)を適用することで,様々なOH基置換安息香酸で架橋された[Ru2]錯体を合成することに成功し,OH基が[Ru2]の酸化還元能に与える影響の系統的な検討が可能となった.その結果,オルト位に置換されたOH基はかなり強い電子求引性を示すことが分かった(Hammett定数so = +0.667 に相当).OH基はOMe基などと同様に,通常は電子供与性の置換基として知られているが(sp = −0.370),量子化学計算による検討より,オルト位に置換された場合は架橋カルボキシル基の酸素原子と分子内水素結合を形成するために,電子求引性の置換基として働く事が示唆された.


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Charge manipulation in metal–organic frameworks: Toward designer functional molecular materials

Hitoshi Miyasaka
Bull. Chem. Soc. Jpn., 2021, 94, 2929-2955. <Award Account> DOI: 10.1246/bcsj.20210277

錯体格子上で電荷を制御する

2019年日本化学会学術賞を受賞した宮坂 等教授のAward Account1999年から現在まで、研究主題の一つとして精力的に研究されている水車型[Ru2II,II]錯体とDCNQITCNQといった配位供与型電子アクセプターとの集積反応により得られる多次元格子化合物の電荷移動制御に関する研究をまとめたもの。2021年上半期までに宮坂研から出された関係論文を主題毎にまとめている。電荷移動制御や磁気制御に関する戦略は、様々な電荷移動錯体に応用可能であり、一連の研究の方法論が参考になるだろう。また、構造の多孔性と格子の電荷自由度の同時制御は、今後大いに発展すると思われる。


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Magnetic Phase Switching Performance in an Fe-Tetraoxolene Layered Metal-Organic Framework via Electrochemical Cycling

Jian Chen, Yoshihiro Sekine, Kouji Taniguchi, and Hitoshi Miyasaka
Inorg. Chem., 2021, 60, 9456-9460. DOI: 10.1021/acs.inorgchem.1c00576

Significant improvement/deterioration of Tc = 100 K by an LIB technique

For reversible magnetic phase control, a technique of electrochemical electron-filling using a lithium ion battery (LIB) system, was employed in a Cl2An2−-bridged Fe-based two-dimensional honeycomb layered compound, (NPr4)2[Fe2(Cl2An)3] (1; Cl2An2− = 2,5-dichloro-3,6-dihydroxy-1,4-benzoquinonate; NPr4+ = tetrapropylammonium cation). The generation/annihilation of radicals Cl2An•3− in 1 enables the significant improvement/deterioration of the magnetic phase transition temperature with Tc = 100 K.


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Magneto-Electric Directional Anisotropy in Polar Soft Ferromagnets of Two-Dimensional Organic-Inorganic Hybrid Perovskites

Kouji Taniguchi, Masaki Nishio, Nobuyuki Abe, Po-jung Huang, Shojiro Kimura, Taka-hisa Arima, and Hitoshi Miyasaka
Angew. Chem. Int. Ed., 2021, 60, 14350-14354. DOI: 10.1002/anie.202103121

二次元有機無・機ハイブリッドペロブスカイトで光学的電気磁気効果の誘起に成功

有機・無機ハイブリッドペロブスカイト系化合物は、単一の物質が有機物と無機物の性質を併せ持つ材料であり、有機物や無機物単体では実現が難しい機能性物質開発の舞台となるポテンシャルを秘めている。本研究では、この特徴を系の対称性制御に活かし、二次元有機・無機ハイブリッドペロブスカイトにおいて、空間反転対称性が破れた強磁性体を開発し、光の領域における電気磁気効果(ME効果)の観測を試みた。光の領域のME効果は、光(電磁波)の電場成分/磁場成分が時間的に振動する磁化/電気分極を誘起する交差相関現象であり、物質を見る方向(表裏)により色や明るさが変わるという風変わりな光学応答(非相反的方向二色性)を生じる。本研究では、強磁性相において非相反的方向二色性の信号を確認し、さらに~50 mT程度の低磁場で効果を制御できることを見出した。これは、開発した物質において、強磁性磁化の発生と同時にME効果の起源となるトロイダルモーメントが自発的に同じ向きに揃う、強磁性-強トロイダル秩序型のマルチフェロイック状態が実現されたことに起因している。


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Magnet Creation by Guest Insertion into a Paramagnetic Charge-Flexible Layered Metal-Organic Framework

Jun Zhang, Wataru Kosaka, Hiroyasu Sato, and Hitoshi Miyasaka
J. Am. Chem. Soc., 2021, 143, 7021-7031. DOI: 10.1021/jacs.1c01537

Creating and deleting magnets with solvents

Changing a non-magnet to magnets is like an alchemy in materials science. To take the holy grail of alchemy, we herein found a chemical approach to create and delete magnets in a charge-flexible metal-organic framework using solvents. Through the insertion of small molecular guests, such as benzene, para-xylene, dichloromethane, 1,2-dichloroethane, and carbon disulfide, the magnetic phase can be artificially tailored from a non-magnet of paramagnet to a bulk magnet of either ferrimagnet or antiferromagnet depending on the type of solvents. This work may bring new prospects for designing new multi-functional materials, in particular, for magnetic metal-organic frameworks.


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Chirality-dependent circular photogalvanic effect in enantiomorphic two-dimensional organic–inorganic hybrid perovskites

Po-Jung Huang, Kouji Taniguchi, Masato Shigefuji, Takatsugu Kobayashi, Masakazu Matsubara, Takao Sasagawa, Hiroyasu Sato, and Hitoshi Miyasaka
Adv. Mater., 2021, 33, 2008611 (1-9). DOI: 10.1002/adma.202008611

分子キラル導入で円偏光ガルバノ効果の制御に成功

円偏光ガルバノ効果(CPGE)は、光起電力効果と同様に光エネルギーを電気エネルギーに変換する効果だが、トリガーは円偏光(CPL)となり発生するゼロバイアス光電流はスピン偏極を持っている。さらに異なる角運動量を持つ右と左CPLが励起する電流は逆方向に流れる。CPGEはスピン軌道相互作用が大きく、加えて反転心の持たない物質系でしか観測できないため、これまでラシュバ系などの界面極性系物質で報告されてきた。一方、キラル系物質の持つ“キラリティー”からも同様な効果が期待され、分子設計の面からも「分子キラリティーの導入」という指針を利用できる。しかし、実際は全く報告例がない。本研究では、キラリティーを導入可能な層状有機・無機ハイブリッドペロブスカイトに着目し、キラリティー由来CPGEの発見を目指して、「カチオン性分子キラルを導入する」という化学的設計指針に基づいて物質設計を行った。その結果、キラルで非極性な物質系が合成され、単波長CPLの照射で光と平行の方向に電流が流れることを確認した。それは、CPLのヘリシティーが反転すると電流が逆方向に流れた。さらに、光電流のCPLヘリシティー依存性もキラリティーによって反転することから、キラリティーに依存するCPGEを初めて観測することに成功した。この結果から、キラルな層状有機・無機ハイブリッドペロブスカイトは光スピントロニクスの要望材料の一つであると言うことができる。


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Ionicity Diagrams for Electron-Donor and -Acceptor Metal-Organic Frameworks: DA Chains and D2A Layers Obtained from Paddlewheel-Type Diruthenium(II,II) Complexes and Polycyano-Organic Acceptors

Yoshihiro Sekine, Masaki Nishio, Tomoka Shimada, Wataru Kosaka, and Hitoshi Miyasaka
Inorg. Chem., 2021, 60, 3046-3056. DOI: 10.1021/acs.inorgchem.0c03335

構造の次元性から生じるMadelungエネルギーを考慮したイオン性相図

当研究室ではこれまでに電子ドナー(D)であるpaddlewheelRu二核(II,II)錯体と、DCNQITCNQ誘導体などの電子アクセプター(A)からなる電荷移動型集積体(D/A-MOF)を合成し、構築ユニットにおける置換基の化学修飾によって、集積体の電子状態や磁気的性質の設計や制御を行ってきた。本研究ではこれまでに単離した化合物に加え、15個の新規中性DA一次元鎖を含めた一連の物質群を用いることで、DAユニットの酸化還元電位およびHOMO/LUMOエネルギーとDA及びD2A集積体の電子状態との相関を示すイオン性相図を新たに作成した。本研究におけるダイアグラムによって、異なる次元性のD/A-MOFについて、電子状態の予測を精密に行うことが可能となる。


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A metal–organic framework that exhibits CO2-induced transitions between paramagnetism and ferrimagnetism

Jun Zhang, Wataru Kosaka, Yasutaka Kitagawa, and Hitoshi Miyasaka
Nature Chem., 2021, 13, 191-199. DOI: 10.1038/s41557-020-00577-y

As CO2 meets porous magnets: How smart the molecular materials become

Metal-organic frameworks (MOFs) and porous coordination polymers (PCPs) with effective CO2 capture, primarily involving high CO2 uptake and selectivity, have been well investigated. However, most of them do not have any CO2-sensitive trigger for changing the intrinsic nature of the framework because of their invariant frameworks from the structural and electronic points of view. In this work, we demonstrate the first CO2-responsive porous magnet, whose magnetic phase is reversibly changed between paramagnetism and ferrimagnetism, like an alchemy, in the CO2-adsorption/desorption treatments, respectively. This magnetic phase change and the modifications to its electronic conductivity and permittivity are triggered by a structural transition accompanied by an intra-lattice electron transfer between the electron-donor and electron-acceptor subunits, which are electronically stabilized by the accommodated CO2 molecules. These findings provide insights into understanding the mechanism by which the switchable properties are induced by gas sorption, which may be helpful in future applications such as gas sensors or memory storages.


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Canting Angle Dependence of Single-Chain Magnet Behaviour in Chirality-Introduced Antiferromagnetic Chains of Acetate-Bridged Manganese(III) Salen-Type Complexes

Po-Jung Huang and Hitoshi Miyasaka
Dalton Trans., 2020, 49, 16970-16978. DOI: 10.1039/D0DT03615C

キラリティーの導入とMnイオン間容易軸のキャンティング反強磁性的相互作用によるSCMの創製

キラリティーの導入によってMn-salenモチーフの二量化を防ぐことに成功し、世界はじめてのMn-salen単体に基づく単一次元鎖磁石(Single-Chain Magnet)を創製した。結晶構造と磁気評価によると鎖内Mnイオン間のキャンティング反強磁性的相互作用が重要であることがわかった。さらにsalen配位子のハロゲン置換基をBrからClやFなど比較的にかさ高くない元素に変えると鎖内Mnイオン間のキャンティング角度が47度からほぼ0になり、SCM性質も示さなくなった。金属イオン間のキャンティング角度はSCMの挙動に大きく関与することは広く知られているが、実際にキャンティング角度の有り無しでSCM挙動を分析した研究は、本報が初である。


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Fine tuning of intra-lattice electron transfers through site doping in tetraoxolene-bridged iron honeycomb layers

Yoshihiro Sekine, Jian Chen, Naoki Eguchi, and Hitoshi Miyasaka
Chem. Commun., 2020, 56, 10867-10870. DOI: 10.1039/D0CC03808C

熱誘起相転移をサイトドープで制御

D2A3型二次元ハニカム層状化合物(NPr4)2[Fe2(Cl2An)3]·(solvent)(ACIE 2018, 57, 12043)及びその脱溶媒体(Chem. Sci. 2020, 11, 3610)は、溶媒の吸脱着で結晶―結晶転移を起こすばかりか、多様な熱誘起格子内電子移動を起こす。これらの電子受容部位(A: Cl2Anm‒ = 2,5-dichloro-3,6-dihydroxo-1,4-benzoquinonate)に対して電子受容能性の異なるユニットX2An (X = F, Br)を部分ドープすることで、それぞれの同形構造を有する固溶体型錯体を合成した。それにより、Xの種類及び添加量に応じて、オリジナル錯体を基準として高温側(X = F)及び低温側(X = Br)の双方向へ転移温度を184~365 Kの温度領域で線形的に移動可能であることを見出した。


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Magnetic Correlation Engineering in Spin-Sandwiched Layered Magnetic Frameworks

Hiroki Fukunaga, Wataru Kosaka, Honoka Nemoto, Kouji Taniguchi, Shogo Kawaguchi, Kunihisa Sugimoto, and Hitoshi Miyasaka
Chem. Eur. J., 2020, 26, 16755-16766. <Hot Paper> DOI: 10.1002/chem.202002588

層状分子磁性体におけるスピン・フラストレーション?

分子磁性体は、構成要素が分子であることに起因する構造の多様性や柔軟性を有し、無機化合物の磁性体にはない自由度の高い設計性が特徴である。当研究室では最近、層状構造を持つ[Ru2]2TCNQ ([Ru2]: paddlewheel型Ru二核錯体, TCNQ: 7,7,8,8-tetracyano-p-quinodimethane)の層間に[FeCp*2]+を挿入することで、層状磁石の[Ru2]2TCNQ中に鎖状磁石として知られる[FeCp*2]+TCNQ·- (Cp*: pentamethylcyclopentadiene)が組み込まれたp-集積型の擬三次元構造[FeCp*2][{Ru2(2,3,5,6-F4PhCO2)4}2TCNQ]·n(solvent)の分子磁石を構築し、二次元的な磁気的相互作用を三次元的に拡張する試みを報告した(Angew. Chem. Int. Ed. 2015, 54, 569-573)。
 本論文では、層状磁石への異なるメタロセンカチオン([MCp*2]+:M = Co, Fe, Cr)の挿入、及び溶媒分子の脱離が三次元的な磁気相互作用に及ぼす影響を詳細に調べた。その結果、脱溶媒型M = Feで、層状分子磁石では初めてとなるスピン・フラストレーション相が創り出されることを見出した。


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CO2-induced spin state switching at room temperature in a monomeric cobalt(II) complex with the porous nature

Manabu Nakaya, Wataru Kosaka, Hitoshi Miyasaka, Yuki Komatsumaru, Shogo Kawaguchi, Kunihisa Sugimoto, Yingjie Zhang, Masaaki Nakamura, Leonard F. Lindoy, and Shinya Hayami
Angew. Chem. Int. Ed., 2020, 59, 10658-10665. <Hot Paper> DOI: 10.1002/anie.202003811

CO2がCo(II)錯体のスピン状態を変える

Co(II)錯体が二酸化炭素(CO2)センサーになるかもしれない。本研究のターゲットは単核孤立系のCo(II)錯体である。合成時の化合物は、4分子の水を結晶溶媒と取り込んでおり、300 Kまでの低温度領域でCo(II)低スピン状態である。しかし、結晶水を除くと、400 Kで高スピン状態から100 K以下で低スピン状態に徐々に変わる熱誘起スピン・クロスオーバーを示す錯体に変化する。この化合物変化は、蒸気暴露により元に戻り、状態変化は可逆である。これだけでも“蒸気センサー”として機能するが、単核錯体でありながら、脱水により得られる細孔に最高2分子のCO2を吸着する。このCO2吸着は、Co(II)の低スピン状態を安定化し、CO2分圧により高スピンー低スピン変換の転移温度を変化させ、室温では、ほぼ高スピン状態と低スピン状態をスイッチすることが可能である。本研究は、熊本大学の速水真也教授のグループとの共同研究である。


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Chameleonic layered metal-organic frameworks with variable charge-ordered states triggered by temperature and guest molecules

Jian Chen, Yoshihiro Sekine, Atsushi Okazawa, Hiroyasu Sato, Wataru Kosaka, and Hitoshi Miyasaka
Chem. Sci., 2020, 11, 3610-3618. DOI: 10.1039/D0SC00684J

State changes variously.

The electron/charge transfer at the molecular level plays a fundamental role in wide areas of chemistry, physics, biology and materials science. The control of inter/intra-lattice electron transfer between electron donor/acceptor sub-units is also essential to design the functional materials showing multiple and variable charge-state by chemical/physical stimuli, which strongly correlated with physical property changes. For this purpose, we designed and constructed a novel two-dimensional Fe-based tetraoxolene-bridged honeycomb magnet, (NPr4)2[Fe2(Cl2An)3] (NPr4+ = tetra-n-propylammonium; Cl2An2– = 2,5-dichloro-3,6-dihydroxo-1,4-benzoquinonate), that exhibits variation of five material states with three unique charge-ordered states triggered by temperature and guest molecules. The solvated (ACIE, 2018, 57, 12043.) and desolvated layers are both thermally active to undergo changeable electronic state by intra-lattice electron transfer between Fen+ and redox-active bridging ligands (Cl2Anm–). Such stimuli responsive chameleonic material, showing several charge-states coupled with the change of magnetic/electronic properties, provides wide scope for new multi-switchable molecular materials.


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Electrochemical Development of Magnetic Long-Range Correlations with Tc = 128 K in a Tetraoxolene-Bridged Fe-Based Framework

Jian Chen, Kouji Taniguchi, Yoshihiro Sekine, and Hitoshi Miyasaka
J. Mag. Mag. Mater., 2020, 494, 165818. DOI: 10.1016/j.jmmm.2019.165818

Molecular magnet with Tc = 128 K made by a LIB technique

A honeycomb layer compound,[(H3O)2(phz)3][Fe2(Cl2An)3], where Fe is divalent and Cl2An2– is 2,5-dichloro-3,6-dihydroxo-1,4-benzoqunonate, is a paramagnet.The post-synthetic electron-doping in the acceptor-site Cl2An2–(Cl2An2− + e− → Cl2An•3−) of the framework using a lithium-ion battery system, producing (Li+)3[(H3O+)2(phz)3][Fe2+2(Cl2An•3−)3],allowed the formation of ferrimagnetwith a high Tc of 128 K.


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Bulk Photovoltaic Effect in a Pair of Chiral–Polar Layered Perovskite-Type Lead Iodides Altered by Chirality of Organic Cations

Po-Jung Huang, Kouji Taniguchi, and Hitoshi Miyasaka
J. Am. Chem. Soc., 2019, 141, 14520-14523. DOI: 10.1021/jacs.9b06815

キラルな有機・無機ハイブリッド層状ペロブスカイト型化合物でバルク光起電力効果発見

光起電力効果は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する効果であり、太陽電池の動作原理として利用されている。従来の太陽電池では、p-n接合等の異なる物質同士が接するヘテロ界面において電位差を発生させ、これを光起電力の起源としている。一方、強誘電体等の反転心を持たない系では、ヘテロ界面を用いず、バルク物質単体で光起電力効果(バルク光起電力効果, BPVE)が発生することが知られてきた。本研究では、このBPVEを、近年、高効率太陽電池材料として脚光を浴びている有機・無機ハイブリッドペロブスカイト化合物で発現させることを目指し、物質開発を行った。BPVEの発生には空間反転対称性の破れが必要条件であることに着目し、キラルな有機分子カチオンを層状ペロブスカイト構造に導入することで対称性の制御を試みた。その結果、キラリティと極性を併せ持つ非反転対称な系が得られ、白色光の照射下でBPVEの観測に成功した。本研究の結果は、空間反転対称性の破れた系で誘起される電子物性のトリガーとして、キラリティの有用性を示唆するものである。


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Control of gas sorption gate-opening in solid solutions of one-dimensional coordination polymers

Jun Zhang, Wataru Kosaka, and Hitoshi Miyasaka
Chem. Lett., 2019, 48, 1308-1311. <Editor's Choice> DOI: 10.1246/cl.190557

Tailorable gated adsorption in one-dimensional coordination polymers

Porous coordination polymers (PCPs) exhibiting an abrupt “step” in adsorption or “gate-opening” (GO) behavior have attracted considerable interests because of their practical applications in gas adsorption and separation. Here we devise an isostructural solid solution series of one-dimensional coordination polymers, [(Ru(1−x)Rhx)2(2,4,5-Me3PhCO2)4(phz)] (x = 0, 0.1, 0.22, 0.39, 0.55, and 1; 2,4,5-Me3PhCO2− = 2,4,5-trimethylbenzoate; phz = phenazine), by mixing [RhII2(2,4,5-Me3PhCO2)4] with [RuII2(2,4,5-Me3PhCO2)4] in x:(1–x) reaction ratios, respectively. This series of compounds systematically tune the GO pressures for the adsorption of CO2 (195 K) and NO (121 K), proposing a feasible and simple method to modulate the gate-opening pressures.


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Local-Site Dependency of Magneto-Chiral Dichroism in Enantiopure One-Dimensional Copper(II)-Chromium(III) Coordination Polymers

Kouji Taniguchi, Shuhei Kishiue, Shojiro Kimura, and Hitoshi Miyasaka
J. Phys. Soc. Jpn., 2019, 88, 093708 (1-3). DOI: 10.7566/JPSJ.88.093708

磁気キラル二色性は、一次元磁性鎖ではどう見える?

磁気キラル二色性(MChD)は、物質を見る方向により明るさや色が異なって見える、光に対するダイオード的な光学現象である。この光学現象は、磁場下に置かれたキラルな系で観測され、物質のキラリティや磁性を反映することが知られてきた。キラリティや磁性を反映する光学現象としては、円偏光二色性(CD)や磁気円偏光二色性(MCD)が有名であるが、これらの測定には特殊な偏光(円偏光)が必要となる。これに対しMChDでは、我々の身の回りのどこにでもある無偏光で、キラリティや磁性の情報を検出することが可能となる。しかし、MChDに物質の磁気特性がどのように反映されるのかは、単一の磁性元素を含むような単純な磁性体を除き、これまで明らかではなかった。そこで本研究では、複数の磁性イオン(Cu(II), Cr(III))を含む、キラルな擬一次元金属錯体ポリマーのd-d遷移に対しMChD測定を行い、磁性との相関を調べた。その結果、MChD強度の磁場依存性が、マクロな測定で観測されるCu(II)-Cr(III)一次元磁気相関に由来する磁化に単純に比例するのではなく、d-d遷移を生じている磁性イオンの局所的な磁化にスケールすることを見出した。この特徴は、局所的な磁性状態のプローブとしてのMChDの可能性を示唆するものである。


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Strong magnetochiral dichroism for visible light emission in a rationally designed paramagnetic enantiopure molecule

Kouji Taniguchi, Masaki Nishio, Shuhei Kishiue, Po-Jung Huang, Shojiro Kimura, and Hitoshi Miyasaka
Phys. Rev. Mater., 2019, 3, 045202 (1-8). DOI: 10.1103/PhysRevMaterials.3.045202

可視光領域で強い磁気キラル二色性を示す物質の開発に成功

磁場下のキラルな系では、磁性とキラリティの結合により生ずる光学現象として磁気キラル二色性(MChD)が知られている。MChDは、光の伝搬方向と磁場の相対配置が、平行or反平行に依存して物質の明るさが異なって見える現象であり、明るく見える方向は物質のキラリティに応じて反転する。近年、マルチフェロイクスなどの反転心を持たない磁性体の研究の進展に伴い、広い波長領域でのMChDが報告されてきたが、最も身近な可視光領域では、光吸収や発光強度の0.01~0.1%程度の極めて弱い効果の観測に留まっていた。本研究では、MChDの微視的なメカニズムに立ち戻った物質設計を行い、可視光領域における強いMChDの実現を目指した。①金属イオン周りの局所的な空間反転対称性の破れの抑制、②大きな全角運動量指数(J)によるゼーマン分裂の増幅、という二つの指針に基づき合成した、新規キラルTb錯体の可視光領域の発光において、発光強度の約16%という、従来の約65倍に相当する強いMChDの実現に成功した。これはMChDを示す系の探索において、微視的メカニズムに基づいた物質開発の初めての成功例である。


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Host-Guest Hydrogen Bonding Varies the Charge-State Behavior of Magnetic Sponges

Jun Zhang, Wataru Kosaka, Yasutaka Kitagawa, and Hitoshi Miyasaka
Angew. Chem. Int. Ed., 2019, 58, 7351-7356. DOI: 10.1002/anie.201902301

Unrevealing the mystery of hydrogen bonding in controlling the electronic states

The change of charge state in a strongly electron-correlated material allows a drastic, huge variation of its intrinsic physical properties. Here, we report a charge-state variable magnetic sponge behavior in a series of pseudo-polymorphic magnets, which shows three types ofmagnets, type-I) paramagnet, type-II) ferrimagnet with TC = 30 K, and type-III)ferrimagnet with TC = 88 K, depending on the degree of solvation.Among them, Tc between 30 and 88 K is reversibly switched by the resolvation/desolvation treatments owing to the CH···O-type hydrogen bonding motif between interstitial solvents and host framework.


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In Situ Tracking of Dynamical NO Capture through a Crystal-to-Crystal Transformation from a Gate-Open-Type Chain Porous Coordination Polymer to an NO-Adducted Discrete Isomer

Jun Zhang, Wataru Kosaka, Susumu Kitagawa, Masaki Takata, and Hitoshi Miyasaka
Chem. Eur. J., 2019, 25, 3020-3031. <VIP> DOI: 10.1002/chem.201805833

Tracking chemical interactions in nano-pores

The utilization of “host-guest chemistry” is one of the efficient ways to achieve a gas storage and a selective capture of guest molecules in nano-sized pores of porous coordination polymers (PCPs). Nevertheless, the dynamical aspects for capturing gases in nano-sized pores were still less understood.Herein, a highly electron-donating chain compound was prepared to selectively capture an electron-acceptor-type gas molecule as nitrogen monoxide (NO). The stepwise NO adsorption process was coherently monitored using different in situ techniques: magnetic and permittivity measurements, IR spectroscopy, and powder/single-crystal X-ray diffraction measurements under accurate gas handling.


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Strong electronic influence of equatorial ligands on frontier orbitals in paddlewheel dichromium(II, II) complexes

Po-Jung Huang, Yoshiki Natori, Yasutaka Kitagawa, Yoshihiro Sekine, Wataru Kosaka, and Hitoshi Miyasaka
Dalton Trans., 2018, 48, 908-914. DOI: 10.1039/C8DT04347G

水車型Cr二核(II, II)錯体のフロンティア軌道制御

水車型カルボン酸架橋Cr二核(II, II)錯体は40年も前から研究されているが、実は、未だその多くが謎のままだ(というより、本研究まで謎のままだった)。長年“Cr–Cr間には、四重結合がある・・・”と信じられていたが、軸位に有効な配位子が結合している場合には四重結合を持たなくなり、代わりに、個々のCr(II)イオンのd軌道間相互作用として描くことができる(Inorg. Chem. 2018, 57, 5371)。この場合、Cr(II)のdσ軌道がHOMOとして表に出てくる。さらに、軸位配位子の電子供与性を用いてsinglet-tripletエネルギーギャップ(ES−T)を制御することができることも、前出論文で記した。本研究では、水車型のエカトリアル位にあるカルボン酸架橋の電子ドナー性(pKa)を調整することで、HOMO/LUMOフロンティア軌道のエネルギーを制御することに成功した。このことは、カルボン酸架橋の置換基を変えることで、Cr二核(II, II)錯体の還元力を制御できることを示している。


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Gas-responsive porous magnet distingishes the electron spin of molecular oxygen

Wataru Kosaka, Zhaoyuan Liu, Jun Zhang, Yohei Sato, Akihiro Hori, Ryotaro Matsuda, Sususmu Kitagawa, and Hitoshi Miyasaka
Nat. Commun., 2018, 9, 5420(1-9). <Editor's Choice> DOI: 10.1038/s41467-018-07889-1

The editor at Nat. Commun., Dr. Vitoria Richards, has chosen to feature the article for Editors' Highlights. URL

酸素分子の電子スピンを見分ける多孔性磁石!

酸素は三重項スピンを持つ常磁性、窒素は反磁性・・・似た二原子分子でも,全く違う性質がそれらの“磁性”だ.このようなガス分子を吸着して,そのスピンを見分ける多孔性材料はできるのか?答えはYesである.本研究で報告する多孔性磁石は,酸素の電子スピンを見分ける.本研究で示す水車型Ru二核錯体とTCNQ誘導体から構成される二次元層状集積体は,磁気相転移温度76 Kのフェリ磁性体であり,窒素,二酸化炭素,酸素に対してガス吸着能を示す.反磁性の窒素,二酸化炭素ガス吸着下では磁気相転移温度の上昇が観測されるが,常磁性の酸素ガス雰囲気下では酸素の圧力に応じてフェリ磁性から反強磁体への連続的な変化が観測される.窒素吸着型と低圧酸素吸着型の構造は同構造であるにも拘わらず,前者はフェリ磁性体,後者は反強磁性体である.これは、酸素の持つ電子スピンが層間の磁気相互作用を媒介しているためであり,すなわち,本化合物は,非磁性の窒素や二酸化炭素と常磁性の酸素を,磁気的性質から識別できる新たな「ガス応答性多孔性磁石」である.


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Thermally Induced Valence Tautomeric Transition in a Two-Dimensional Fe-Tetraoxolene Honeycomb Network

Jian Chen, Yoshihiro Sekine, Yuki Komatsumaru, Shinya Hayami, and Hitoshi Miyasaka
Angew. Chem. Int. Ed., 2018, 57, 12043-12047. <VIP> DOI: 10.1002/anie.201807556

Thermally driven electron transfer in a Fe-tetraoxolene honeycomb network produces SCM

The research subject: “How to design and construct a magnetic MOF?” have already became a great challenge and opportunity for researchers. One bold and effective strategy is to attempt to generate paramagnetic radicals on bridging ligands via electron transfer from metal center to bridging ligands, namely, in a donor (D)-acceptor (A) system. Based on this idea, we synthesized a novel tetraoxolene-bridged Fe-based honeycomb layered compound, (NPr4)2[Fe2(Cl2An)3]∙n(Solv) (Cl2Ann− = 2,5-dichloro-3,6-dihydroxy-1,4-benzoquinonate), which had two types of valence states [FeIIHSFeIIIHS(Cl2An2−)2(Cl2An•3−)]2− at T > T1/2 ⇌ [FeIIIHSFeIIIHS(Cl2An2−)(Cl2An•3−)2]2− at T < T1/2 with a boundary at T1/2 = 236 K. The low-temperature phase of the compound can be regarded as a chain-knit network, exhibiting single-chain magnet behavior at low temperatures.


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Ionic Donor-Acceptor Chain Derived from an Electron Transfer Reaction of a Paddlewheel-Type Diruthenium(II, II) Complex and N,N’-Dicyanoquinonediimine

Yoshihiro Sekine, Tomoka Shimada, and Hitoshi Miyasaka
Chem. Eur. J., 2018, 24, 13093-13097. DOI: 10.1002/chem.201802630

[Ru2]DCNQIのイオン性鎖を結晶で単離するのは難しい!

異種架橋カルボン酸からなる水車型Ru二核錯体(電子ドナー(D))及びDMDCNQI(電子アクセプター(A))との集積化によって一次元鎖状化合物[{Ru2(2,6-(CF3)2PhCO2)2(p-PhPhCO2)2}DMDCNQI]の結晶による単離に成功した。しかも、この化合物は、集積時に電子移動を起こしたイオン性型(D+A–)の電子状態であった。D:A = 1:1のイオン性の一次元鎖は、D+A–間の強い磁気相関を解明する上で単離が熱望されてきたが、D:A = 2:1の比率で組み上がる二次元層状化合物と比べて、単結晶による単離が極めて難しく,特にDCNQI誘導体を含むイオン性一次元鎖状化合物の報告例はなかった。磁気測定により、S = 3/2とS = 1/2のスピンが約–100 Kの超交換相互作用によりカップリングしたフェリ磁性鎖として振舞い、鎖間反強磁性的相互作用によりTN = 7.9 Kで反強磁性相転移を示した。


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Layered Ferrimagnets Constructed from Charge-Transferred Paddlewheel [Ru2] Units and TCNQ Derivatives: The Importance of Interlayer Translational Distance in Determining Magnetic Ground State

Wataru Kosaka, Zhaoyuan Liu, and Hitoshi Miyasaka
Dalton Trans., 2018, 47, 11760-11768. <Themed issue: Frontiers in coordination chemistry and its applications> DOI: 10.1039/C8DT01566J

“層間並進距離” が層状磁性体の磁気秩序を支配する ~PART II~:

水車型ルテニウム二核錯体とTCNQ誘導体からなる二次元層状磁性体は,二次元層内に働く強い超交換相互作用により100 K近い磁気相転移温度を示す.一方で,低次元構造であるが故に,磁気秩序の基底状態(フェリ磁性もしくは反強磁性)は,最終的に層間に働く微弱な磁気双極子相互作用により決定される.最近我々は,「層間相互作用が“層間並進距離”により予測可能である」,というシンプルな経験則を報告した(Mater. Chem. Front. 2018, 2, 497).この経験則によれば,層間並進距離がおよそ10.3 Åよりも短い場合に反強磁性磁気秩序が出現する.しかしながら,経験則に基づく法則にも拘わらず,これまでに,反強磁性化合物の例が4つであるのに対し,フェリ磁性化合物はこれまで僅か2例しか報告されていなかった.今回,新たに合成した3つの二次元層状磁性体は,92―93 Kという高い温度での磁気相転移を示すフェリ磁性体であった.いずれの化合物も層間並進距離は10.3Åよりも大きな値を示しており,経験則の有効性を裏付ける結果となった.


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Magnetic Sponge Behavior via Electronic State Modulations

Jun Zhang, Wataru Kosaka, Kunihisa Sugimoto, and Hitoshi Miyasaka
J. Am. Chem. Soc., 2018, 140, 5644-5652. DOI: 10.1021/jacs.8b02428

The first porous magnet where its electronic state varies depending on whether guest-IN or -OUT

The “guest-induced electronic state modulation” is one of the most promising triggers to change magnetic and other properties of porous coordination polymers. In this study, we demonstrated a reversible magnetic change associated with electronic state modulations by solvation/desolvation (SD) cycles. The solvated compound [{Ru2(O2CPh-2,3,5-Cl3)4}2(TCNQMe2)]·4DCM (1) had a one-electron-transferred, charge-ordered state with a [{Ru2II,II}–TCNQMe2•−–{Ru2II,III}+] (1e-I) formula, showing long-range ferrimagnetic ordering at Tc = 101 K. Interestingly, its desolvated compound (1-dry) provided a charge-disproportionate disordered state with a [{Ru2}0.5+–TCNQMe21.5−–{Ru2II,III}+] (1.5e-I) formula, resulting in a low-Tcferrimagnet with Tc = 34 K. A large Tc variation with ΔTc ≈ 70 K was successfully achieved. This case shows the first example of magnetic switch governed by charge state modulations induced by the sorption of solvent guests.


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One-Dimensional Chains of Paddlewheel-Type Dichromium(II,II) Tetraacetate Complexes: Study of Electronic Structure Influenced by σ- and π-Donation of Axial Linkers

Po-Jung Huang, Yoshiki Natori, Yasutaka Kitagawa, Yoshihiro Sekine, Wataru Kosaka, and Hitoshi Miyasaka
Inorg. Chem., 2018, 57, 5371-5379. DOI: 10.1021/acs.inorgchem.8b00352

Cr二核(II,II)錯体のCr–Cr間には四重結合があるのか?

カルボン酸架橋Cr二核(II,II)錯体は、元来Cr–Cr間に四重結合をもつことが前提に研究が行われてきた。しかし、Cr二核(II,II)錯体自体が高酸化活性であることから、合成が困難であり、一連の化合物における系統的な調査は行われてこなかった。本研究では、Cr二核(II,II)錯体ユニットを酢酸架橋錯体に固定し、4つの架橋型ピラジン・ピリジン誘導体を軸位配位子に用いることで、空気中で比較的安定な一次元化合物を合成し、その軸位のドナー性と構造、磁気的性質の相関を明らかにした。その結果、Cr–Cr距離および分子軌道がσとπ軌道に強く関与することが明らかとなり、DFT計算により、従来のCr–Cr多重結合を基にした軌道モデルの予想に反し、σ性軌道がHOMOであり、δ性軌道がほぼそれぞれのCr中心に局在化していることが明らかとなった。これは、結合次数は1に近くなっていることを意味している。また、基底状態である一重項と第一励起三重項のエネルギーギャップEはCrイオン間の反強磁性相互作用Jに相関しており、軸位のドナー性で制御可能であることが明らかとなった。軸位配位子を持つCr二核(II,II)錯体を描写するには、新たなモデルが必要である。


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Hammett-Law Correlation in the Electron-Donation Ability of trans-HeterolepticBenzoate-Bridged Paddlewheel-Type Diruthenium(II, II) Complexes

Yoshihiro Sekine, Kinanti H. Aliyah, Tomoka Shimada, Jun Zhang, Wataru Kosaka, and Hitoshi Miyasaka
Chem. Lett., 2018, 47, 693-696. DOI: 10.1246/cl.180155


異種架橋カルボン酸からなる水車型[Ru2II,II]錯体の系統的合成

当研究室では、これまでに、異種架橋カルボン酸からなるRu二核(II, II)錯体(heteroleptic [Ru2II,II]錯体)の選択的な合成法を見出し(Dalton Trans. 2016, 45, 7427)、その一つを用いた二次元集積体の合成と電子ドープによる磁性体変換について報告した(Chem. Lett. 2018, in press)。heteroleptic [Ru2II,II]錯体を構築素子として用いることで、より緻密に電荷移動制御された集積体の設計が期待できるが、その電荷移動設計の前提となる“heteroleptic [Ru2II,II]錯体の電子状態制御”については未解明であった。本論文では、安息香酸塩のパラ位の置換基Rを変化した、一連のheteroleptic [Ru2II,II]錯体、[Ru2(2,6-(CF3)2PhCO2)2(p-RPhCO2)2(THF)2]を単離し、結晶構造及び磁気測定により電子状態を決定した。計算化学及び電気化学測定の結果、HOMOエネルギーや酸化還元電位は、対応するカルボン酸p-RPhCO2HのpKa及びHammett定数とよい相関があることが分かった。置換基効果により構築素子の電子ドナー性を予測することが可能であり、新たな電荷移動型集積体の設計に有用であることを明らかにした。


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Charge-Transfer Layered Assembly of a trans-Heteroleptic Paddlewheel-Type Diruthenium(II, II) Complex with a TCNQ Derivative: Electrochemical Tuning of the Magnetism

Kouji Taniguchi, Nanami Shito, Hiroki Fukunaga, and Hitoshi Miyasaka
Chem. Lett., 2018, 47, 664-667. DOI: 10.1246/cl.180086


磁気イオン制御可能な安定な中性型二次元D/A-MOFを作る

当研究室では、電子供与体(D)のRu二核錯体と電子受容体(A)のTCNQ誘導体からなる二次元の中性D/A-MOFにおいて、リチウムイオン挿入を介した電子ドーピングによりフェリ磁性秩序を誘起出来ることを見出してきた。しかし中性D/A-MOFの合成に有効な、電子供与性の低い[Ru2II,II(CF3CO2)4]をDとして用いた系では、リチウムイオン挿入用の空隙を作る為の結晶溶媒除去操作により、ほとんどの場合、構造が不安定になり骨格が壊れてしまう。本研究では、トリフルオロ酢酸(CF3CO2–)の一部を、嵩高い安息香酸(2,6-(CF3)2PhCO2–)に置き変えた、異種架橋カルボン酸を有するRu二核錯体([Ru2II,II(CF3CO2)2(2,6-(CF3)2PhCO2)2])を用いることで、脱溶媒に対して安定な構造の二次元中性D/A-MOFを合成し、リチウムイオン挿入を介した磁性制御(磁気イオン制御)に成功した。


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Magnetic Switching by the In-Situ Electrochemical Control of Quasi-Spin-Peierls Singlet States in a Three-Dimensional Spin Lattice Incorporating TTF–TCNQ Salts

Hiroki Fukunaga, Masanori Tonouchi, Kouji Taniguchi, Wataru Kosaka, Shojiro Kimura, and Hitoshi Miyasaka
Chem. Eur. J., 2018, 24, 4294-4303. DOI: 10.1002/chem.201704815


TTF-TCNQスピン二量化が三次元スピン配向を決める:LIBでスピン状態制御

螺旋状のD2A三次元ネットワーク内にTTF·+が導入された新規集積体の合成に成功した。この化合物は全構築分子上にスピンを有しており、既報の例を踏まえると、長距離磁気秩序の発現が期待された。しかし、実際は、TTF·+とTCNQ·-がスピンPeierls転移を起こすかのようにスピン二量体[TTF·+(↑)/TCNQ·-(↓)]を形成したため、磁気秩序が起こらなかった。三次元的な磁気相関を二量体が分断しているためである。そこで、リチウムイオン電池(LIB)を使って電気化学的に電子を導入し、[TTF0(↑↓)/TCNQ·-(↓)]の状態を誘起することにより、三次元格子を介した磁気相関を発現させることに成功した。この常磁性体―フェリ磁性体変換は、LIBの放電―充電により可逆にスイッチできる。


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Metamagnetism with TN = 97 K in a layered assembly of paddlewheel [Ru2] units and TCNQ: an empirical rule for interlayer distances determining the magnetic ground state

Wataru Kosaka, Masahisa Itoh, and Hitoshi Miyasaka
Mater. Chem. Frontiers, 2018, 2, 497-504. <Invited paper for the special issue on π-conjugated system bricolage (figuration) toward functional organic molecular systems> DOI: 10.1039/C7QM00534B


”層間並進距離”が層状磁性体の磁気秩序を支配する

二次元層状磁性体において層間の磁気相互作用は,微弱ながらも化合物全体の磁気秩序を決定づける重要な因子である.今回合成した[Ru2(m-ClPhCO2)4]とTCNQ(OMe)2からなる二次元層状集積体は,格子内での強いフェリ磁性的スピン配列と層間の反強磁性的相互作用の結果,TN = 97 Kで反強磁性相転移を示す.一方で,この磁性体は,Hsf = 0.5 Tという非常に弱い磁場でスピンフリップを起こす,磁場誘起フェリ磁性体であった.この小さなHsfの原因を探るべく,既報の[Ru2]2TCNQ系層状磁性体と併せて磁気秩序と結晶構造の関係について検討した結果,層間並進距離が10.3 Åよりも短い場合に反強磁性基底状態が実現するという経験則の存在が示唆された.


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Magnetic Sponge with Neutral–Ionic Phase Transitions

Wataru Kosaka, Yusuke Takahashi, Masaki Nishio, Keisuke Narushima, Hiroki Fukunaga, and Hitoshi Miyasaka
Adv. Sci., 2018, 5, 1700526 (1-10). <Open Access> DOI: 10.1002/advs.201700526


中性ーイオン性転移を結晶溶媒の吸脱着で可逆的に制御する

電子ドナー/アクセプター集積体における中性—イオン性(N-I)転移は、温度や圧力等の外部刺激により磁性を始めとして電子状態に依存した物性の制御が可能な点で興味深い現象である。本研究ではpaddlewheel型Ru二核錯体とTCNQ誘導体からなる一次元鎖状集積体[Ru2(3,4-Cl2PhCO2)4TCNQ(OEt)2]∙DCE (DCE = 1,2-dichloroethane)を合成し、これが230 Kにて一段階のN-I転移を示すことを確認した。さらに結晶溶媒DCEの吸着の度合いによって転移温度が連続的に変化し、完全に脱離することでN-I転移挙動が消失することが分かった。この結果は本化合物の転移挙動を結晶溶媒DCEの吸脱着により連続的かつ可逆的に制御できることを示している。


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Magnetic Phase Switching in a Tetraoxolene-Bridged Honeycomb Ferrimagnet Using a Lithium Ion Battery System

Kouji Taniguchi, Jian Chen, Yoshihiro Sekine, and Hitoshi Miyasaka
Chem. Mater., 2017, 29, 10053-10059. DOI: 10.1021/acs.chemmater.7b03691


テトラオキソレンを用いたハニカム層状格子の磁性をリチウムイオン電池で制御

「遷移金属錯体集積体の架橋有機配位子上でのラジカルスピンの生成・消滅を制御し、磁気秩序相の安定性を可逆的に制御する」・・・この手法は色々な化合物に使えそうである。当研究室ではこれまで、水車型Ru二核錯体(II,II)とTCNQ誘導体から成る中性錯体格子において、可逆的に磁性を制御することが可能であることを見出してきた。磁性制御の“鍵”は、酸化・還元に伴うTCNQ誘導体上での事後処理的なラジカルスピンの生成・消去であった。本研究では、同様に還元状態でラジカル種となるテトラオキソレン誘導体を架橋配位子として持つMn—Crハニカム構造集積体に着目し、リチウムイオン電池システムを酸化還元制御に用いたところ、電池の充放電に連動して、フェリ磁性転移温度が可逆的に変化することを見出した。この結果は、常磁性金属イオン間の架橋配位子上での“ラジカルスピンのON/OFF”が、磁気制御手段として広範な化合物に適用できることを示すものである。


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Gate-Open-Type Sorption in a Zigzag Paddlewheel Ru Dimer Chain Compound with a Phenylendiamine Linker Instructed by a Preliminary Structural Change of Desolvation

Changxiao Dou, Wataru Kosaka, and Hitoshi Miyasaka
Chem. Lett., 2017, 46, 1288-1291. DOI: 10.1246/cl.170509 <Editor's Choice>


溶媒和相の存在がゲート型吸着特性の可否を決定する?

水車型Ru二核(II,II)錯体と架橋配位子N,N,N’,N’-tetramethyl-p-phenylendiamineからなるジグザグ一次元鎖化合物を合成したところ,用いるRuユニットによって,鎖間に溶媒を含んだ「溶媒和相」へと結晶化する化合物(1-solv)と,溶媒を含まない「非溶媒和相(無包摂相)」に結晶化する化合物(2)が得られた。化合物1-solvも真空引きによって2と同様な無包摂相1へと変化し、両者の構造は極めて類似していた。しかし,化合物1のみ様々なガスに対して明確な構造変化を伴うゲート型吸着特性を示した。ガス吸着相1⊃Gasの構造を明らかにしたところ,溶媒和相1-solvに見られる構造の特徴を有していることがわかった。即ちこれは,溶媒和相の構造安定性がゲート型ガス吸着特性の発現の可否を左右していることを示唆する結果である。


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The Effect of Anion-Sublattice Structure on the Displacement Reaction in Copper Sulfide Cathodes of Rechargeable Magnesium Batteries

Yuta Tashiro, Kouji Taniguchi, and Hitoshi Miyasaka
Chem. Lett., 2017, 46, 1240-1242. DOI: 10.1246/cl.170503


Mg二次電池の正極ディスプレイスメント反応機構には、アニオンfcc格子が有効?

Mg二次電池は、Liイオン電池に代わる次々世代の二次電池として注目されているが、可逆的に動作する電極材料は非常に限られており、新たな材料探索の指針が求められている。本研究では、似た化学組成ながら、異なるアニオン骨格を有する二種類のCu2-xS(立方晶相(digenite), 六方晶相(chalcocite))をそれぞれMg二次電池電極として評価し、最近我々が報告したディスプレイスメント反応の有効性を検証した。その結果、反応生成物のMgSと共通の面心立方格子のS2-骨格を持つ立方晶相(digenite)のみで可逆的な電極性能が観測された。これは、アニオン骨格を維持したまま遷移金属とMgイオンが交換されるディスプレイスメント反応機構の方が、アニオン骨格の組み換えを要する他のコンバージョン反応よりも、Mg二次電池の電極反応機構として有利なことを示唆している。


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Magneto-ionic phase control in a quasi-layered donor/acceptor metal–organic framework by means of a Li-ion battery system

Kouji Taniguchi, Keisuke Narushima, Kayo Yamagishi, Nanami Shito, Wataru Kosaka, and Hitoshi Miyasaka
JJAP, 2017, 56, 060307 (1-4). DOI: 10.7567/JJAP.56.060307


磁気イオン制御過程における交換相互作用パスの次元性変換

中性状態で電子供与体(D)のRu二核錯体と電子受容体(A)のTCNQ(OC2H4OH)2がπ共役/非共役一次元鎖を形成する層状化合物に対し、リチウムイオン電子システムを用いた電子ドーピングによる磁性制御(磁気イオン制御)を試みた。この系は、構造的には二次元的に結合した系であるが、Aサイトに電子ドーピングした場合には、π共役一次元鎖のみで交換相互作用が発生する為、磁気的には擬一次元的な系とみなされる。その為、以前に報告した二次元的な交換相互作用パスを持つ系よりも、低い転移温度(~10 K以下)が期待される。しかし、Dとして[Ru2(2,6-F2PhCO2)4]を用いた場合、二次元的交換相互作用パスを持つ系と同程度の高い磁気転移温度(88 K)でフェリ磁性秩序の発生が観測された。この系は、結合をしていないCN基が、配位結合をしているOH基と立体障害なしに組み替わることが可能な特殊な構造となっており、リチウムイオン挿入過程で配位結合の再構成により、二次元的な交換相互作用パスが形成されたことが示唆される。


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Built-in TTF-TCNQ charge-transfer salts in π-stacked pillared layer frameworks

Yoshihiro Sekine, Masanori Tonouchi, Taiga Yokoyama, Wataru Kosaka, and Hitoshi Miyasaka
CrystEngComm, 2017,19, 2300–2304. DOI: 10.1039/C7CE00492C

TTFカチオンを包摂したπスタック型ピラードレイヤー構造

電荷移動塩であるTTF•+TCNQ•–を二次元層状化合物に組み込むことで、新規pスタック型ピラードレイヤー構造を作り出した。二次元層は、配位受容ユニットである水車型ロジウム二核(II,II)錯体([Rh2])と配位供与ユニット且つ有機アクセプターであるTCNQ•–の2:1比からなり、[Rh2]のカルボン酸配位子の立体障害の違いによって、ピラー部位に対応するTTF•+(もしくは、中性TTF)分子のパッキング様式が異なる3種類の化合物を作り分けることに成功した。本手法を用いることで、今後は、異種カチオンを取り込んだピラードレイヤー構造体の構築が可能であり、多様な多重機能性構造体の設計が期待される。


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In Situ Reversible Ionic Control for Non-Volatile Magnetic Phases in a Donor/Acceptor Metal-Organic Framework

Kouji Taniguchi, Keisuke Narushima, Hajime Sagayama, Wataru Kosaka, Nanami Shito, and Hitoshi Miyasaka
Adv. Func. Mater., 2017, 27, 1604990 (1-10). DOI: 10.1002/adfm.201604990

可逆的にON-OFFスイッチ可能な不揮発性イオン制御型電磁石の開発に成功

当研究室で開発した酸化・還元活性種を構成要素とする金属-有機構造体(MOF)をリチウムイオン電池(LIB)システムの正極として用いることにより、充放電操作と連動してON-OFFスイッチが可能な新たな電磁石の開発に成功した。LIBシステムを“イオン挿入を介したバルク物質のフィリング制御デバイス”として利用することで、放電時の正極への電子ドーピングにより、人工的な磁石を創製していることを意味する。充放電により誘起された磁性相は電気化学平衡状態にあり、外部から電圧等を印加し続けなくとも状態が維持される為(不揮発性)、低消費電力の電磁石としての応用等が期待される。


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Stepwise fabrication of donor/acceptor thin films with a charge-transfer molecular wire motif

Yoshihiro Sekine, Taiga Yokoyama, Norihisa Hoshino, Manabu Ishizaki, Katsuhiko Kanaizuka, Tomoyuki Akutagawa, Masa-aki Haga, and Hitoshi Miyasaka
Chem. Commun., 2016, 52, 13983–13986. DOI: 10.1039/C6CC08310B

D+A–イオン性一次元鎖の薄膜作製に成功

配位高分子を基板上へ固定化した分子性薄膜の構築は、近年盛んに研究されているが、実は、磁気的・電気的に活性な分子性薄膜(機能性薄膜)の例は非常に少ない。一方で、多重薄膜を用いた電気・磁気物性操作が近年のトピックスであることを考えれば、機能性薄膜は、今後極めて注目されると思われる。そのような機能性薄膜を合理的に作るために、我々は電荷移動型集積体に着目した。本研究では、電子ドナー(D)である水車型ルテニウム二核(II,II)錯体と有機アクセプター(A)であるDCNQI分子の電子移動反応を逐次制御することにより、D+A–鎖が、SAM/ITO基盤上に伸張した薄膜を作製することに成功した。薄膜作製の技術的な点から、単結合一次元鎖についての逐次集積薄膜の例は極めて少ないが、本系は集積時の電子移動によるCoulomb相互作用により、それを達成している。


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Regulation of NO Uptake in Flexible Ru Dimer Chain Compounds with Highly Electron-Donating Dopants

Jun Zhang, Wataru Kosaka, Hiroki Fukunaga, Susumu Kitagawa, Masaki Takata, and Hitoshi Miyasaka
Inorg. Chem., 2016, 55, 12085–12092. DOI: 10.1021/acs.inorgchem.6b02349

電子アクセプターのNOガスをより効率的にトラップするには?

一次元鎖化合物である[{Ru2(4-Cl-2-MeOPhCO2)4}(phz)](Comp-0)は選択的に一酸化窒素(NO)を吸着する(JACS 2013, 135, 18469)。しかし、もし、より電子ドナー性の高い[Ru2]ユニットからなる同構造化合物なら、より効率的にNOガスを吸着するだろう。残念ながら、それに該当する化合物[{Ru2(2-MeOPhCO2)4}(phz)](Comp-1)は、何らガスを吸わない(JACS 2014, 136, 12304)。そこで、Comp-1で使われた、電子ドナー性の高い[Ru2(2-MeOPhCO2)4]ユニットを上記のComp-0に移植(ドーピング)した。予想通り、50%ドープ程度まではComp-0と同構造が維持され、NO吸着量が増加することが明らかとなった。


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Copper Selenide as a New Cathode Material based on Displacement Reaction for Rechargeable Magnesium Batteries

Yuta Tashiro, Kouji Taniguchi, and Hitoshi Miyasaka
Electrochemica Acta, 2016, 210, 655-661. DOI: 10.1016/j.electacta.2016.05.202

Mg二次電池における新規ディスプレイトメント反応型正極材料β-Cu2Seの発見

Mg二次電池は次世代の二次電池として期待されているのもかかわらず、反応機構が明確且つ優良な正極材料の開発には、今なお試行錯誤の状態である。我々が新規開発したディスプレイスメント反応型正極材料β-Cu2Seは容量120 mAh/gで35回のサイクルに耐えるという比較的良い性能を示した。電気化学反応としてはCu2Se + Mg2 + 2e- ↔ MgSe + 2Cuとなるが、Cu2SeとMgSeの両物質が共通して持つSe副格子間を銅やマグネシウムイオンが行き来することでリバーシブルに反応が起こるディスプレイスメント反応機構に則っている。Mg二次電池において初めてこの機構を観測した。


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Trans-heteroleptic carboxylate-bridged paddlewheel diruthenium(II, II) complexes with 2,6-bis(trifluoromethyl)benzoate ligands

Yoshihiro Sekine, Wataru Kosaka, Hirohisa Kano, Changxiao Dou, Taiga Yokoyama, and Hitoshi Miyasaka
Dalton Trans., 2016, 45, 7427-7434. DOI: 10.1039/C6DT00569A

trans置換された水車型[Ru2II,II]錯体を選択的に合成できる

一般的によく知られているpaddlewheel型(水車型)ルテニウム二核(II, II)錯体は、同一の架橋カルボン酸を有する等方的構築素子[Ru2II,II(RCO2)4]である。一方、異種架橋カルボン酸を有するルテニウム二核(II, II)錯体の報告例は極めて少なく、今までにその構造が明らかになった例はない。本研究ではオルト位に嵩高い置換基をもつ安息香酸(2,6-(CF3)2PhCO2–)を用いることで、trans位のカルボン酸架橋基が異なる一連のpaddlewheel型ルテニウム二核(II, II)錯体[Ru2II,II(2,6-(CF3)2PhCO2)2(RCO2)2(THF)2]を合成し、結晶構造を初めて明らかにした。これらは、異方的な構造をもつ電子ドナー素子として使えるだろう。


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Construction of an Artificial Ferrimagnetic Lattice by Li-Ion Insertion into a Neutral Donor/Acceptor Metal-Organic Framework

Kouji Taniguchi, Keisuke Narushima, Julien Mahin, Wataru Kosaka, and Hitoshi Miyasaka
Angew. Chem. Int. Ed., 2016, 55, 5238-5242. DOI: 10.1002/anie.201601672

リチウムイオン電池によりイオン制御可能な磁石の創出に成功 ーバルクで非磁性体/磁性体変換の初めての例ー

リチウムイオン電に中性型の層状D/A-MOFを電極として組み込むことで、人工的にイオン制御可能な磁石を創り出すことに成功した。リチウムイオン電池のイオン挿入機能を介して、電極材料中の金属錯体(水車型[Ru2II,II]錯体)と連結した非磁性の有機電子アクセプターに電子を導入し磁気モーメントを付与することで、物質全体に磁石としての性質を発現させた。さらに、電池の放電状態を制御することで、磁気相転移温度を変化させることにも成功した。


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Tuning of Stepwise Neutral–Ionic Transitions by Acceptor Site-Doping in Alternating Donor/Acceptor Chains

Keita Nakabayashi, Masaki Nishio, and Hitoshi Miyasaka
Inorg. Chem., 2016, 55, 2473–2480. DOI: 10.1021/acs.inorgchem.5b02858

中性ーイオン性転移の制御:DA鎖のAサイトドープ

中性ーイオン性転移を示すDA鎖[Ru2(2,3,5,6-F4PhCO2)4(DMDCNQI)]·2(p-xylene)(JACS 2011, 133, 5338)のアクセプター(A:DMDCNQI = 2,5-dimethyl-N,N'-dicyanoquinodimethane)部分にアクセプター性の低いDMeODCNQI(2,5-dimethoxy-N,N'-dicyanoquinodimethane)をサイトドープすると、添加量に依存して中性ーイオン性転移温度を制御することができるこを実験的に証明した。D-サイトドープ(Chem. Eur. J. 2014, 20, 5121)と異なり、二つの転移温度(中性相から中間相、中間相からイオン性相)は温度幅を維持したまま低温に移動するが、徐々に転移幅が広くなり、ほぼドープ量20%程度で中間相が消失した。中間相の消失するドープ量はD-サイトドープ時とぼぼ同じである。また、圧力により転移温度を制御することにも成功した。


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Electron-Transferred Donor/Acceptor Ferrimagnet with Tc = 91 K in a Layered Assembly of Paddlewheel [Ru2] Units and TCNQ

Wataru Kosaka, Hiroki Fukunaga, and Hitoshi Miyasaka
Inorg. Chem., 2015, 54, 10001-10006. DOI: 10.1021/acs.inorgchem.5b01776

二次元層状磁性体でありながらTc = 91 K

電子ドナー(D)としてのPaddlewheel型Ru二核錯体[Ru2(2,4,6-F3PhCO2)4(THF)2]と,電子アクセプター(A)TCNQから得られたD2A型集積体,[{Ru2(2,4,6-F3PhCO2)4}2(TCNQ)]·2(p-xylene)·2CH2Cl2 は,DおよびAのHOMO,LUMOレベルから予想されるとおり,一電子移動イオン性状態(1e-I, D0.5+2A–)を持つ二次元層状集積体であった.1e-I状態では,全てのビルディングブロック上に電子スピンが存在しており(S = 1 for [Ru2II,II], S = 3/2 for [Ru2II,III]+, and S = 1/2 for TCNQ•−),二次元層内におけるフェリ磁性長距離磁気秩序が発現するものの,過去に報告してきた類似化合物では層間の相互作用が反強磁性的となり,全体としては反強磁性磁気秩序が多く観測されてきた.しかしながら,本化合物では層間に強磁性的な相互作用が働き,TC = 91 Kのフェリ磁性体となっていることが明らかとなった.


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Crystal-to-crystal transformation of a graphite-like layered compound: a self-locking structure with position-variable intercalated molecules

Masaki Nishio, Natsuko Motokawa, and Hitoshi Miyasaka
CrystEngComm, 2015, 17, 7618-7622. DOI: 10.1039/C5CE01260K

結晶中でアントラセンが空孔を埋めるように移動する

Paddlewheel型金属二核錯体とTCNQからなる二次元集積体の多くは、層間に芳香族系溶媒分子が2枚挿入されてTCNQとπスタックすることで安定化されている。当然、このπスタック構造が破壊されると格子も壊れてしまうし、層状なので、スライドして崩壊しやすいと予想される。ところが、層間にアントラセンを挿入した化合物[{M2(CF3CO2)4}2TCNQ]·2(anthracene)·2(C2H2Cl4) (M = Rh, Ru)では、脱溶媒により層間に存在していたアントラセン分子が層内のヘキサゴナルカラムに部分的に移動し、あたかも層に鍵をかけるように結晶の崩壊を防ぐことが明らかとなった。


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Charge-disproportionate ordered state with δ = 0.75 in a chemically sensitive donor/acceptor Dδ+2A2δ– layered framework

Hiroki Fukunaga, Takafumi Yoshino, Hajime Sagayama, Jun-ichi Yamaura, Taka-hisa Arima, Wataru Kosaka, and Hitoshi Miyasaka
Chem. Commun., 2015, 51, 7795-7798. DOI: 10.1039/C5CC01633A

新しい電荷秩序状態をもつ超格子を発見

Paddlewheel型[Ru2II,II]錯体(D)とTCNQ誘導体(A)が成す電荷移動型D2A二次元層状化合物は、D/A間の電子移動量の違いにより、中性型D02A0、一電子移動型D0.5+2A–、二電子移動型D+2A2–の極限状態が考えられる。本研究では、オンサイトクーロン反発が比較的小さいTCNQ(OMe)2と安息香酸配位子上のフッ素置換位置のみが異なる[Ru2]ドナーを用い、電子状態を制御することに成功した。このうち、para-F置換体安息香酸を用いた化合物は、D0.5+2A–とD+2A2–の中間状態D0.75+2A1.5–で表される電荷状態を持ち、両ドメインが交互に現れる超格子構造を有する新しい電荷秩序状態をとることが明らかとなった。


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The effect of chlorine and fluorine substitutions on tuning the ionization potential of benzoate-bridged paddlewheel diruthenium(II, II) complexes

Wataru Kosaka, Masahisa Itoh, and Hitoshi Miyasaka
Dalton Trans., 2015, 44, 8156-8168. DOI: 10.1039/C5DT00505A

Paddlewheel型ルテニウム二核(II, II)錯体のHOMOレベルを精密に調整

Paddlewheel型ルテニウム二核(II, II)錯体 [Ru2II,II(R-CO2)4]は、架橋カルボン酸(R-CO2–)の種類に応じてその電子ドナー性の調整が可能であり、酸化還元活性な錯体格子を設計する上で非常に有用な構築素子である。本研究では、様々なフッ素置換、および塩素置換安息香酸架橋 [Ru2] を合成し、それらの電気化学的性質とHOMOレベル、およびHammett定数との相関について検討を行った。このような広範且つ精密な系統的研究は金属ー金属結合化合物では最初であり、置換基の位置と数を調整することで、極めて精密に[Ru2]ユニットの電子供与能を制御することが可能であることを明らかにした。


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Fully Electron-Transferred Donor/Acceptor Layered Frameworks with TCNQ2–

Wataru Kosaka, Takaumi Morita, Taiga Yokoyama, Jun Zhang, and Hitoshi Miyasaka
Inorg. Chem., 2015, 54, 1518–1527. DOI: 10.1021/ic502513p

二電子移動イオン性状態(D+–A2−–D+)の作り方

一電子ドナー(D)のpaddlewheel型Ru二核(II, II)錯体とTCNQ誘導体などの電子アクセプター(A)からなる電荷移動型集積体D/A-MOFsでは、DおよびAのHOMO/LUMOレベルを調節することで、集積体の電子状態を中性とイオン性の間で制御することができる。中でもD2A型二次元層状集積体においては、DからAへの電荷移動量に応じて、一電子移動イオン性状態(D+‒A–‒D; 1e-I)および二電子移動イオン性状態(D+–A2−–D+; 2e-I)のようにさらに多彩な電子状態が出現する。本研究では、2e-I型電子状態をとる層状D2A化合物を合理的に設計し、1e-Iと2e-I状態を精密に制御するための新たなダイアグラムを提唱した。本ダイアグラムの作製により、1e-I状態と2e-I状態の境界に位置する新奇な電子状態の探索にも期待が持たれる。


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Magnet Design via the Integration of Layer and Chain Magnetic Systems in a p-Stacking Pillared Layer Framework

Hiroki Fukunaga and Hitoshi Miyasaka
Angew. Chem. Int. Ed., 2015, 54, 569–573. <VIP> DOI: 10.1002/anie.201410057

一次元鎖+二次元層=πスタック型ピラードレイヤー構造

高相転移磁石を創るには不利である二次元層状磁性体と一次元磁性鎖をそのままくっつけて三次元磁石を創ろう・・・層+鎖(柱)=ピラードレイヤー構造、という発想から、paddlewheel型Ru二核ユニットとTCNQからなるD2A層状化合物とMillerらにより報告された電荷移動型 [FeCp*2] TCNQ一次元カラム状磁石を自己集積により合体させた、”πスタック型ピラードレイヤー構造”磁性体を開発した。その結果、TC = 82 Kという高い温度でフェリ磁性相転移が発現し、圧力印加による線形的なTC上昇を確認した(TC = 107 K@12.5 kbar)。このことは、従来制御が難しかった二次元層間の磁気相互作用を、層間の[FeCp*2]+のスピンを通じた長距離磁気秩序の構築によって克服したことを意味しており、新たな分子磁石の設計法を提案するものである。


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Gate-Opening Gas Adsorption and Host-Guest Interacting Gas Trapping Behavior of Porous Coordination Polymers under Applied AC Electric Fields

Wataru Kosaka, Kayo Yamagishi, Jun Zhang, and Hitoshi Miyasaka
J. Am. Chem. Soc., 2014, 136, 12304–12313. DOI: 10.1021/ja504992g

ゲート吸着を電気的に捉えることに成功

多孔性配位高分子のガス吸着挙動を電気的に捉えることに成功!水車型Ru二核(II, II)錯体とphenazineからなる、ある一次元鎖化合物(JACS 2013, 135, 18469)は,CO2,NO,O2に対してゲート開閉を伴うガス吸着挙動を示す。この化合物に交流電場の印加することにより,ガス吸着時の構造変化とガス分子ー格子間の電気的相互作用を同時に電気的に捉えることに成功した。本手法は,多孔性分子骨格におけるガス吸着特性の温度・圧力応答性に関する知見を簡便に与えうる電気的な検出法であり,化学的刺激により駆動する電子デバイス創成への道筋を与えるものである。


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Coordination Programming in the Design of Porous Coordination Polymers: Tuning of the Electronic Activity of Frameworks for Selective NO Trapping

Wataru Kosaka, Kayo Yamagishi,Ryotaro Matsuda, Susumu Kitagawa, Masaki Takata, and Hitoshi Miyasaka
Chem. Lett. 2014, 43, 890-892. DOI: 10.1246/cl.140490

NOの選択的吸着を得るには?

Paddlewheel型Ru二核錯体とphenazineからなる一次元鎖化合物において,Ru2ユニットに[Ru2II,II(4-F-2-OMePhCO2)4]を用いたところ,[Ru2II,II(p-FOMePhCO2)4]を用いた一次元鎖では見られなかったNOに対する特異的な吸着能が観測された.両化合物共に,NOと一次元鎖の相互作用の際に重要であると考えられるphenazine近傍の空隙の存在は認められなかったものの,オルト位に導入したメトキシ基の効果によりRu2ユニットの電子供与性が高まったため,前者では特異性が発現したと考えられる.すなわち,NOのような電子受容性の高いゲストへの吸着選択性を誘起する上では,電子供与能の高いRu2ユニットを用いることが,細孔の形状制御と共に重要なファクターであることが示された.


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Magnetic Sponge Phenomena Associated with Interchain Dipole–Dipole Interactions in a Series of Ferrimagnetic Chain Compounds Doped with Minor Diamagnetic Species

Masaki Nishio and Hitoshi Miyasaka
Inorg. Chem. 2014, 53, 4716-4723. DOI: 10.1021/ic500413j

非磁性ドープと結晶転移による鎖間距離変化で長距離磁気秩序を制御

電子ドナー•アクセプターから成る電荷移動型D+A–一次元鎖[Ru2(2-MeO-4-ClPhCO2)4(BTDA-TCNQ)]·2.5(benzene) (1)はS = 3/2とS = 1/2のスピンがJ/kB = –100 Kもの相互作用を持つフェリ磁性鎖であり、鎖間反強磁性的相互作用によりTN = 11 Kで反強磁性転移を示す。1は脱溶媒によりcrystal-to-crystal転移してdry体(1’)になり、鎖間距離が短くなる。この構造変化により、1’ではTNが14 Kに上昇した。更に1は、酸化還元不活性かつ反磁性である[Rh2II,II]錯体をドーピングすることで、ドープ率に比例した転移温度の低下を示す。つまり、脱溶媒とドーピングの両方を用いることで系統的な磁性制御が可能である。


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Doping Effect in a Three-Dimensional Donor/Acceptor–Magnet: Percolated Magnetic Pathways Formed Dependent on Local Electron Transfers from Dopant to Acceptor

Hiroki Fukunaga, Wataru Kosaka, and Hitoshi Miyasaka
Chem. Lett., 2014, 43, 541-543. DOI: 10.1246/cl.131119

電子移動を利用した磁性制御

三次元無限構造を持つ化合物[{Ru2(m-FPhCO2)4}2(BTDA-TCNQ)]は、BTDA-TCNQ•−を通したフェリ磁性物質であり、Tc = 107 Kで磁気相転移を起こす(Angew. Chem. Int. Ed. 2008, 47, 7760)。今回、よりドナー性の高い[Ru2(m-MePhCO2)4]を、この化合物へドーピング付加することに成功した。ドープされた化合物はTcを低温にシフトさせたが、ドープ率10%を境に急激な変化が見られた。この挙動は磁気経路のパーコレーションが起きていることを示唆しており、ドーピングによる物性変化を把握するための道標となるものである。


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Systematic Tuning and Switching of Neutral and Ionic Phases in a Donor/Acceptor Chain Compound by Doping Dummy Donors and Pressure Application

Keita Nakabayashi and Hitoshi Miyasaka
Chem. Eur. J., 2014, 20, 5121-5131. DOI: 10.1002/chem..201304420

ドーピングにより中性ーイオン性転移の制御に成功

ドナー[Ru2(2,3,5,6-F4PhCO2)4]とアクセプターDMDCNQIから成る一次元鎖D/A-MOF [Ru2(2,3,5,6-F4PhCO2)4DMDCNQI]·2p-xylene(= 0)は、DA共有結合からなる初のN-I転移化合物である(J. Am. Chem. Soc., 2011, 133, 5338)。オリジナル化合物0に対して、ドナー性の低い[Ru2(F5PhCO2)4]を部分添加する化学的手法と、圧力印加という物理的外場制御を用いることで転移温度を自在に制御することに成功した。特に、磁性変化として転移を明示できる系として興味深く、圧力のON/OFFにより、中性ーイオン性変化に加え、常磁性体ーフェリ磁性体のスイッチを実現した。


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Selective NO Trapping in the Pores of Chain-Type Complex Assemblies Based on Electronically Activated Paddlewheel-Type [Ru2II,II]/[Rh2II,II] Dimers

Wataru Kosaka, Kayo Yamagishi,Akihiro Hori, Hiroshi Sato,Ryotaro Matsuda, Susumu Kitagawa, Masaki Takata, and Hitoshi Miyasaka
J. Am. Chem. Soc., 2013, 135, 18469-18480. DOI: 10.1021/ja4076056

[Ru2II,II]ユニットのドナー性を高めることで、NOの選択的吸着に成功

電子的に活性化されたPaddlewheel型[Ru2II,II]及び[Rh2II,II]錯体とphenazineからなる高ドナー性空孔をもつ一次元鎖化合物を合成したところ、NOガスを選択的に吸着させ、且つそのまま捕捉できることが明らかとなった。ガス吸脱着in-situ赤外分光法により、空孔内には大きく分けて2種類の環境にあるNO分子が存在し、主に二次ゲート開口によって急激に吸着されるNO分子が、より強く空孔に吸着されていることが確認された。この結果は、ある種のNO分子が格子との間で電子的な相互作用をしており、その相互作用によって空孔内に捕捉されていることを意味している。この電子的相互作用は、格子の電子状態に摂動として働くと予想され、本成果は、活性分子の吸脱着により格子物性を制御する新たな方法論を開拓する一歩である。


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Carrier Concentration Dependent Conduction in Insulator-Doped Donor/Acceptor Chain Compounds

Masaki Nishio, Norihisa Hoshino, Wataru Kosaka, Tomoyuki Akutagawa, and Hitoshi Miyasaka
J. Am. Chem. Soc., 2013, 135, 17715-17718. DOI: 10.1021/ja409785a

電子移動型DA一次元鎖に不活性種をドープすると、伝導度が高まる

酸化還元不活性種(P)が少量ドープされた電子ドナー(D)と電子アクセプター(A)一次元鎖が、鎖内D→A電子移動を起こした場合、鎖内のPで挟まれるドメインは、必ずA0/A−の混合原子価状態になる。これは、ドメインの長さに因らず、かならず1つのA0が入り込む。即ち、Pで挟まれたドメイン内は、動的に電子を輸送し、もし、Pを介したドメイン間のトンネル電子移動が可能な系であるなら、一次元鎖内で長距離電子輸送が可能になる。この場合、Pのドープ量、即ちキャリアーと見なせるA0/A−ペアの数に比例する。このような新しい導電性化合物の設計を提唱し、実験的に証明した。


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Modification of charge transfer in a two-dimensional donor/acceptor framework by the insertion of another donor-type molecule into electronegative interlayer pockets

Masaki Nishio, Natsuko Motokawa, Miho Takemura, and Hitoshi Miyasaka
Dalton Trans., 2013, 42, 15898-15901. (Invited to the themed issue on Coordination Programming: Science of Molecular Superstructures towards Chemical Devices) DOI: 10.1039/C3DT51271A

層間挿入物質の違いで層内の電荷移動を制御する

D2A型二次元層状化合物[{Ru2(CF3CO2)4}2TCNQF4]は、層内のフェリ磁性磁気秩序と層間の反強磁性的磁気秩序により、TN = 98 Kで反強磁性体転移を示す(磁場をかけるとフェリ磁性体に転移する:磁場誘起フェリ磁性体)(JACS 2006, 128, 11358; ibid 2010, 132, 1532)。しかし、もうひとつのドナーであるpyreneを層間に挿入し、[pyrene·TCNQ]の層間の相互作用を誘導すると、層内のD/A電子移動が阻害され、常磁性体に変化する。電子的な摂動を与える分子を格子間に挿入することにより、格子の電子状態を変化させることに成功した。


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Axial-Site Modifications of Paddlewheel Diruthenium(II, II) Complexes Supported by Hydrogen Bonding

Wataru Kosaka, Naoto Yamamoto, and Hitoshi Miyasaka
Inorg. Chem., 2013, 52, 9908–9914. DOI: 10.1021/ic401030r

Paddlewheel型[Ru2II,II]錯体を配位結合+水素結合(“デュアル”結合)で繋げる

Paddlewheel型[Ru2II,II]錯体は、MOF/PCPなどの配位ネットワークを形成する構築素子としてだけでなく、電子ドナーや常磁性種としての機能性素子として極めて有用であることがわかってきた。しかし、実際に集積体を構築するには、集積反応の段階で軸位の結合を合理的に設計することは難しく、目的の分子集積を阻害する結合性溶媒などを反応系から排除するなどの工夫が必要であった。今回、[Ru2II,II]ユニットの酸素原子と水素結合形成が可能な分子或いは構築素子を用いることにより、集積体が配位結合+水素結合(“デュアル”結合)の強固な結合をつくることを見出した。その結果、dithiobiuret錯体の弱い配位能力を持つimino基さえも結合した一次元鎖状錯体の構築に成功した。


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Polyoxometalate-based frameworks with a linker of paddlewheel diruthenium(II, III) complexes

Akihiro Hashikawa, Yuki Sawada, Yuma Yamamoto, Masaki Nishio, Wataru Kosaka, Yoshihito Hayashi, and Hitoshi Miyasaka
CrystEngComm, 2013, 15, 4852-4859. DOI: 10.1039/C3CE40426A

Paddlewheel型[Ru2II,II]錯体とPOMの新しい集積体

3種類のポリオキソ金属クラスターとPaddlewheel型[Ru2II,III]錯体([Ru2II,III(piv)4(THF)2]BF4 (piv = pivalate))とを集積させることにより、一次元から三次元までの安定なネットワーク構造を構築することに成功した。昨年Chem. Lett.にて1D鎖と2D層状化合物を速報したが、Keggin型のPOMを用いることにより、POMの四面体型を反映したCristobalite型(SiO2型)の格子を構築するに至った。


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Donor/acceptor neutral aggregation of a paddlewheel-type [Ru2II,II] complex and TCNQ

Wataru Kosaka, Yudai Ishii, and Hitoshi Miyasaka
Polyhedron, 2013, 52, 1213-1218. (Invited paper for the Werner special issue of Polyhedron) DOI: 10.1016/j.poly.2012.06.040

πスタックを利用して[Ru2II,II]錯体とTCNQを集積

Paddlewheel型[Ru2II,II]錯体の軸位をキャップするようにacridine (C13H9N; acr)を配位させたdiscrete化合物([Ru2(2,3,5,6-F4-PhCO2)4(acr)2]; 2,3,5,6-F4-PhCO2– = 2,3,5,6-tetrafluorobenzoate)を合成した(形はまるで人工衛星のようである)。Acridineはπ電子の広がる芳香環であるため、[Ru2]の電子密度がacridineにも広がる可能性がある。DFT計算を行うと、予想通り不対電子を持つ[Ru2II,II]のπ*電子密度がacridineにも存在していることが明らかとなった。TCNQとの集積体は、acridine部でπスタックしており、Through-spaceのD/A電荷移動系を形成している。残念ながら、今回用いたD/Aは中性型であったが、新しい電荷移動系の構築に道筋をつけた。


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Control of Charge Transfer in Donor/Acceptor Metal–Organic Frameworks

Hitoshi Miyasaka
Acc. Chem. Res., 2013, 46, 248–257. DOI: 10.1021/ar300102t

D/A-MOFsの物性制御戦略をまとめたアカウント

電子ドナー(D)と電子アクセプター(A)からなる共有結合(配位結合)格子をDonor/Acceptor Frameworks (DAFs)、特に、DやAが金属錯体からなる格子をD/A-Metal-Organic Frameworks (D/A-MOFs)と名付けています。DとAのそれぞれの化学的性質や構造的な特徴を活かして、合理的にDAFsやD/A-MOFsを構築し、多次元格子上の電荷移動(電子移動)を制御することにより、電荷移動や電子移動に媒介されるスピンや電子を自在に操る分子設計を行っています。本論文は、現在当研究室で行っている分子設計や概念に関してまとめた論文です。合理的に分子設計を行うことによって、様々な物性に繋げることが可能であることが理解できるでしょう。まさに「分子でプラモデルを作る」がごとくです。


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CO2 superabsorption in a paddlewheel-type Ru dimer chain compound: Gate-open performance dependent on inter-chain interactions

Wataru Kosaka, Kayo Yamagishi, Hiroki Yoshida, Ryotaro Matsuda, Susumu Kitagawa, Masaki Takata, and Hitoshi Miyasaka
Chem. Commun., 2013, 49, 1594-1596. DOI:10.1039/C2CC36153A

鎖間の相互作用の強さでCO2の選択的吸着を実現

Paddlewheel型[M2II,II]錯体(M = Ru, Rh)とphenazine (phz)からなる一次元鎖化合物[M2(p-FPhCO2)4(phz)] (M = Ru, Rhで同形)は、一次元鎖の隙間に空孔を持つため、ガス状の小分子を吸着させます。特に、CO2(195K)に対しては、M = RuとRhで圧倒的な差があり、M = Ruにおいて、構造変化を伴った二段階の吸着挙動を示し、1ユニットに対して12分子もの CO2 を吸着させることが明らかとなりました。これは鎖間の相互作用がRu体の方がRh体よりも弱く、柔軟に構造を変化させることが可能であることに起因しています。


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Observation of two types of magnetization relaxation in a weakly correlated antiferromagnetic chain of MnIII2 single-molecule magnets

Hitoshi Miyasaka, Ayumi Saitoh, and Motohiro Nakano
Dalton Trans., 2012, 41, 13691-13696. (invited to the themed issue: Frontier and Perspectives in Molecule-Based Quantum Magnets) DOI: 10.1039/C2DT31444D

一次元磁性鎖でSMM挙動とSCM挙動を周波数の違いで確認

ST = 4単分子磁石であるMnIII salen系二量体([MnIII2])と反磁性種であるFeII oximate錯体からなる一次元鎖化合物[–{MnIII2}–ON–FeII–NO–]を単離。反磁性FeIIを介した一次元鎖方向の弱い相互作用が[MnIII2]ユニットのSMM磁化緩和に影響を与えるが、交流磁化率の周波数に依存して2種類の磁化緩和過程が存在していることが明らかとなった。一方は[MnIII2]のSMM磁化緩和であり、他方は一次元相関の影響を受けた磁化緩和(単一次元鎖磁石の有限鎖緩和)であると予想される。


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Honeycomb frameworks with a very large mesh of 39 × 29 Å diameters stabilized by p-stacked coronene molecules

Tomonori Nozaki, Wataru Kosaka, and Hitoshi Miyasaka
CrystEngComm, 2012, 14, 5398-5401. DOI: 10.1039/C2CE25806D

巨大なハニカムネットワークを三角構築素子とπ系coroneneで実現

直線型配位受容構築素子であるpaddlewheel型[Ru2II,II]錯体と様々な配位供与構築素子となる有機架橋配位子から構築されるMOF集積体の多くは、用いる構築素子の配位サイトを飽和するように組み上がるため、それら格子構造が有機架橋配位子の形や配位サイトの幾何構造・数に大きく依存する。本論文では、三角形の配位供与構築素子であるtripyridyltriazine (TPT)を用いることで、例外に漏れず、大きなメッシュサイズ(29×39 Å)を維持したままハニカム格子を構築することに成功した。ただ、このような”すかすか”なシートを安定に積層するために、coroneneを”糊”の役目に使っている。このように、[Ru2II,II]錯体を用いるMOF集積体では、ある程度構造を予想することが可能である。


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An ionicity diagram for the family of [{Ru2(CF3CO2)4}2(TCNQRx)] (TCNQRx = R-substituted 7,7,8,8-tetracyanoquinodimethane)

Keita Nakabayashi, Masaki Nishio, Keiko Kubo, Wataru Kosaka, and Hitoshi Miyasaka
Dalton Trans., 2012, 41, 6072-6074. DOI: 10.1039/C2DT30365E

同構造D2A層状化合物中で、Aのアクセプター性と電荷移動の相関を明らかにした

二次元fishnet型(ハニカム型)ネットワークを構築するD2A化合物[{Ru2(CF3CO2)4}TCNQRx] (Rx = H4, 1; F2, 2; Cl2, 3; Br2, 4; F4, 5; Me2, 6; (MeO)2, 7)は、TCNQF4 (5)の時だけ一電子移動を起こし、TN = 97 Kの高い相転移温度を持つ反強磁性体になる(JACS 2006, 128, 11358; JACS 2010, 132, 1532)。しかし、他の全ては電荷分離を起こさない中性型である。この電荷移動は、TCNQRxの電子親和力で説明され、実際に、[Ru2(CF3CO2)4]のHOMOレベルとTCNQRxのLUMOレベル差(ΔED/A)により系統的に理解できることが明らかとなった。


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Coulombic Aggregations of MnIII Salen-Type Complexes and Keggin-Type Polyoxometalates: Isolation of Mn2 Single-Molecule Magnets

Yuki Sawada, Wataru Kosaka, Yoshihito Hayashi, and Hitoshi Miyasaka
Inorg. Chem., 2012, 51, 4824-4832. DOI: 10.1021/ic300215q
Highlighted in the ACS Virtual Issue: Quantum Molecular Magnets.

Mn(III) salen錯体とPOMとの集積体

ポリアニオンであるKeggin型ポリオキソタングステンクラスターとMn(III) salen型錯体のout-of-plane二量体との集積体を合成。POM/[Mn-salen]の組成比はPOMの価数に依存。Mn(III) salen錯体の二量体はS = 4の単分子磁石(Single-Molecule Magnets; SMMs)になることが知られているが、分子間相互作用の制御は容易ではない。本系では、立体的に嵩高い反磁性POMを用いることで結晶内における分子パッキングを制御し、SMM分子を磁気的に孤立させることに成功した。また、Mn二量体SMMがPOMと結合した一次元鎖錯体も見出された。POMを用いたこのような低次元構造体の例は極めて珍しい。


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Cyano-Bridged MnIII-MIII Single-Chain Magnets with MIII = CoIII, FeIII, MnIII, and CrIII

Hitoshi Miyasaka, Tomokura Madanbashi, Ayumi Saitoh, Natsuko Motokawa, Ryuta Ishikawa, Masahiro Yamashita, Stefan Bahr, Wolfgang Wernsdorfer, and Rodolphe Clérac
Chem. Eur. J., 2012, 18, 3942-3954. DOI: 10.1002/chem.201102738

ヘキサシアノ金属とMn(III) salen錯体のSCM

Tri-cationであるMn(III) salen系錯体と[M(CN)6]3– (M = Co, S = 0; Fe, S = 1/2; Mn, S = 1; Cr, S = 3/2)を用い、直線型同構造のCN架橋Mn–M一次元鎖を合成。CN架橋の化合物は多数報告されているが、一連の一次元鎖シリーズはこの報告が世界で初めて。Mn-Coは、Mn由来S = 2の常磁性鎖、Mn-FeとMn-Mnは、ヘテロスピン強磁性鎖、Mn-Crは、フェリ磁性鎖である。後者3つの化合物は、異なるスピン状態をもつ単一次元鎖磁石(Single-Chain Magnets)。問題は、これらの化合物がどのようなSCMであるか・・・である。Ising SCMを説明する磁気相関エネルギー(Glauberダイナミクス)とHeisenberg SCMを説明する磁壁生成エネルギー。これらのスピン反転エネルギーを考えても、今回のSCMのダイナミクスをうまく説明できない。おそらく、これらのSCMがIsingとHeisenbergのちょうど中間に位置する化合物なのだろう。


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Inorganic Frameworks Made by Combining Paddlewheel Diruthenium(II, III) Complexes and Polyoxometalate Clusters

Yuki Sawada, Yuma Yamamoto, Masaki Nishio, Wataru Kosaka, Yoshihito Hayashi, and Hitoshi Miyasaka
Chem. Lett., 2012, 41, 212-214. DOI: 10.1246/cl.2012.212

[Ru2II,III]+とPOMの集積体

Paddlewheel型ルテニウム二核(II,III)錯体と二種類のポリオキソ金属クラスターを集積させることにより、一次元鎖状化合物、(TBA)[{Ru2(piv)4}{Mo6O19}]·x(solv) (1)及び、二次元ネットワーク化合物、(TBA)[{Ru2(piv)4}2{H3V10O28}]·x(solv) (2)を得ることに成功した。このような集積体は、電子的・磁気的物性を狙った、新しい集積体の構造モデルとして有用である。


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A Dimer-of-Dimers Composed of Paddlewheel Diruthenium(II, III) Complexes and a Bridge of Tetrachlorohydroquinonate(2–) Devived by Intramolecular Charge Transfers

Masahisa Itoh, Yuichiro Asai, Hiromichi Kamo, Akira Miura, and Hitoshi Miyasaka
Chem. Lett., 2012, 41, 26-28. DOI: 10.1246/cl/2012.26

p-クロラニル酸塩(–2)を架橋した[Ru2II,III]+のdimer-of-dimers

強力な電子ドナーである[Ru2II,II]とアクセプターであるクロラニル(QCl4)を反応させることにより、[{Ru2}–(QCl4)–{Ru2}]の骨格を持つ、dimer-of-dimersを単離することに成功。2つの[Ru2]ユニットからQCl4へ分子内電子移動を起こすことにより、[Ru2]ユニットは[Ru2]+となり、QCl4は、2-の状態として局在化している。この電荷分離状態は、磁性、スペクトルデータによりうまく説明することができる。


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Isolation of a stable lacunary Dawson-type polyoxomolybdate cluster

Akihiro Hashikawa, Makiko Fujimoto, Yoshihito Hayashi, and Hitoshi Miyasaka
Chem. Commun. 2011, 47, 12361-12363. DOI: 10.1039/C1CC15439G

タングステン酸より活性なモリブデンのポリオキソメタレートで初めての欠損型Dawson構造を単離!!

混合原子価型6欠損Dawson型テトラデカモリブデートは、Dawson型構造のベルト部位を主骨格としており、上下方向に骨格を拡張できる可能性を秘めている。また、可逆な多段階酸化還元特性を示し、ドナーにもアクセプターにもなり得る酸化物錯体である。酸化還元後も安定な酸化物骨格を持つため、極めて興味ある化合物である。


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Stepwise Neutral-Ionic Phase Transitions in a Covalently-Bonded Donor/Acceptor Chain Compound

Hitoshi Miyasaka, Natsuko Motokawa, Tamiko Chiyo, Miho Takemura, Masahiro Yamashita, Hajime Sagayama, and Taka-hisa Arima
J. Am. Chem. Soc., 2011, 133, 5338-5345. DOI: 10.1021/ja110007u

共有結合DA鎖で初めて中性ーイオン性転移挙動を発見

Paddlewheel型のルテニウム二核(II,II)錯体を電子ドナー(D)、DCNQI系分子を電子アクセプター(A)に用い、DA共有結合一次元鎖で初めての中性ーイオン性転移を発見。その転移は二段階で起こり、中間相は中性鎖とイオン性鎖が1:1で混合した相を形成していることを明らかにした。このような混合相の形成は、結晶格子中でのユニット間のCoulomb相互作用による。温度可変多段階N-I転移は世界で初めて。